dear partner 07
 




もともと、この幼馴染には口で勝てたことがないのだ。
(口ではなく、純粋な力勝負でも勝てないだろうが)
僕は潔く合宿参加を了承した。
にこにこと機嫌よさそうに笑っている精ちゃんをみると、それでよかったかもと思えるから不思議だ。
その後ろでは、切原くんがすこし引きつった顔で笑っているけれど。

「伊鈴ちゃん、来週の木曜日から一週間、試験休みでしょ?
その内の五日間を使って、新レギュラーのチームワークを深めて試合の連携が上手くとれるように毎年合宿をするんだ。
本当ならマネージャーか新入生から見繕って手伝いを頼むんだけど…」

今年はいいのがいなくて、と精ちゃんは笑った。
確かに、掃除、洗濯、その他諸々は前から得意だった。
それに、あの一はを纏めていた庄ちゃんも、実は私生活では結構大雑把だったのだ。
大勢の世話をするのは慣れている。

「伊鈴ちゃんが手伝ってくれるなら、今年はもっといい合宿所にしようかな…」

「合宿所って部費でしょ?そんなことしたらダメだよ」

うーん、と悩む精ちゃんにつっこむと、精ちゃんは満面の笑みで答えた。

「大丈夫だよ、僕の財布から出すから」

「え!?ぶちょー!?」

その笑みを見て、切原くんの顔色がすこし青くなったのは気のせいだろうか。




『来週伊助いねぇの!?』

「うん、幼馴染の部活の合宿の手伝いに行くんだけど…」

帰宅後、きり丸から来週の予定を問うメールが入っていた。
そのまま今日決まった予定を返信するとメールの受信音の代わりに鳴ったのは着信音だった。

『俺たちも来週からテスト休みなんだよ…だから伊助に皆で会いに行こうと思ってたのに…』

「え!?うそ!」

それを知っていたら、絶対に予定なんて入れなかったのに…
しかも、今日までなにも予定が入っていなかったのだから余計にくやしい。
がっくりと肩をおとす僕に、きり丸は慌てたようにフォローした。

『ま、まぁ一週間ずっと合宿なワケじゃないんだろ?
暇な日があったらメールか電話しろよ?俺たち一週間全部あけてあるんだから!』

「うぅ…ありがとう…」

『じゃ、俺これからバイトだから!』

「…年を誤魔化してバイトしてたらいつかばれるからね!」

中学生のきり丸にできるアルバイトは限られているはずなので、そうつっこむときり丸は大丈夫、と笑った。

『だって俺のバイト先、黄昏時商事の諸泉サンの秘書だから!』

「ちょ!…え!?」

ぷつん、と通話が切られた後も、僕はきり丸の言っていた言葉のせいでしばらくフリーズしたままだった。









     






キリのいいとこで切ります。短かくてすみません…



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