dear partner 06
 




テニスコートはきれいに整備され、中では部員たちが一生懸命練習していた。
たくさんの人が、一つの目標に向かって頑張っているところは見ていて気持ちがいい。
僕は精ちゃんに自分の姿が見えて、尚且つ目立たない位置からテニス部の様子を見つめていた。

(…レギュラーの人ってなんであんなに目立つんだろう…)

見学していて、最初は一生懸命テニスをしている人たちを眺めていたが、次第に飽きてくる。
試合でもしていれば楽しいんだろうけど、練習ではあまり面白味はなかった。
すると、他の事に目がいってしまう。例えば…レギュラー陣の髪の色とか。

切原君や、柳先輩、弦ちゃんのような黒髪や、眼鏡をかけている人の茶髪はともかく。

「朱やら白やら…中学生がそれでいいのかな…?」

「確かに。でも校則で禁止されているわけじゃないからな」

「…土井先生…」

気配で気がついていただろう、と笑う先生に、まぁ…と頷いておく。

「立海って、そんなに校則緩いんですか?」

「まあな。染髪も化粧も、制服の改造も禁止されていない。
全ては生徒の自主性に任せてる、と言っているが…まあそれで大きな問題にならないところが付属進学校ってかんじだなぁ…」

「?付属学校って緩いんですか?」

「立海がお金持ち学校ってのもあるかもな。つまり、そこまで素行の悪い奴は入ってこないんだよ」

前の学校では大変だった…と笑いながら土井先生は言うが。
土井先生のような絶対に勝てないような先生がいても、素行の悪い…良くいえば度胸のある生徒はいるものなのか。
まあ、土井先生は見た目は優男でとても強そうには見えないけど。

「って、前の学校ってきり丸達が通ってる学校じゃないですか」

「わりといたなあ、命知らずが。私が出るまでもなかったけど」

「?」

「山田先生と山本シナ先生がいたから」

シナ先生。それは初耳だ。さぞやその素行の悪い方たちは地獄をみただろう。
前のくの一たちの記憶を思い出し、背筋が震えた。
女の子は可愛いけど怖いのだ。今の自分も性別は女だけど、くの一のようには振舞えない。

「山田先生にはもちろん体術ではだれも勝てないんだが…シナ先生と話した後の生徒はみんな更正してたな」

笑う土井先生の顔も、少し引きつっていた。
自分も笑ってはいたが、土井先生と同じくらいには引きつっていただろう。




「伊鈴ちゃん?しっかり見てた?」

精ちゃんの、笑っているのに目が笑っていないこの顔。
途中から土井先生と話していて見ていなかったことがばればれなんだろう。

「…お疲れ様、精ちゃん」

「伊鈴ちゃん?」

「ごめん!ぜんっぜん見てなかった!」

威圧するようなこのオーラをどうにかしてほしい。
そう思って正直に謝ると、精ちゃんは深いため息をついた。

「つまらなかった?」

「…正直」

二郭すっげー正直者!と精ちゃんの後ろで切原くんは笑っていた。
確かに本人に向かってつまらなかったという人間も少ないだろう。

「結構俺たちのパフォーマンスは人気があるんだけどな…」

「そーそー!丸井先輩の妙技とか、仁王先輩の変装とか〜」

「…たしかにすごかったけど…」

妙技はともかく、変装は鉢屋先輩に勝てる人は今まで数人しか見たことがない。
多分白髪…銀髪?の先輩が仁王先輩というのだろうが、あの人が鉢屋先輩に買っているかと問われれば。
まったく足元にも及ばないのだ。

「ま、いいじゃないっスか!部長!」

「ごめんね、試合には絶対見に行くから!」

精ちゃんを取り成してくれる切原君に感謝しながらもう一度謝ると、精ちゃんはきれいな顔で笑った。

「じゃあ、来週からの新レギュラー陣春の合宿。伊鈴ちゃんもマネージャーで参加してね」

「…え?」


もちろん、拒否権は僕には無かった。


(全部、土井先生が悪い)






     











抹消致しました
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -