dear partner
02
誰にも会うことなく、僕は中学生になった。
幼馴染の2人は一年早く、公立の小学校から立海大付属の中等部に入学している。
本当は自分はそのまま公立の中学へ入学してもよかったのに、精ちゃんがあまりにも立海を進めるものだから、僕の両親は流されてしまったのだ。
べつに僕はどっちでもいいからいいんだけど、精ちゃん。
僕は絶対に君たちテニス部のマネージャーになんかならないからね。
入学式も終わり、新入生は各自の教室に向かう。
立海は初等部からのくり上がりが多いせいか、中等部への編入生はどうしても孤立してしまうようだ。
「ほら、お前ら席に着け。初めてのHRを始めるから!」
配られた教科書を一人机で確認していると、担任の先生が入ってきた。
あわててクラスメイトが席につく中、僕は自分の目を疑った。
だって、その先生の顔が…なつかしい先生の顔だったから。
(土井先生…)
そんな、まさか。
今まで、前世(まえ)の知り合いには会ったことがなかったのに。
混乱する自分をおいて、クラスの出席簿をもって土井先生は出席をとっていく。
「…二郭」
「はい…」
自分の名前の前に少し間が開いたが、土井先生は前と同じように自分の名前をよんだ。
ただ、読みにくい名前だったからなのか、それとも…土井先生も覚えていてくれたのだろうか?
クラスメイトの自己紹介を聞き流しながら、僕はじっと土井先生を見つめていた。
「今日から1年3組を受け持つことになった、土井半助だ。担当教科は社会科。
公立の小学校から、この学校に移動になったから、多分初等部から立海にいるやつよりこの学校を知らないと思う。
分からなかったらお前らにきくからな〜。1年間よろしく頼む!」
土井先生の自己紹介に、生徒たちはくすくす笑いながら返事をした。
先生は格好いいし、生徒には人気のでる先生になるだろう。
「それじゃあ、これから委員会を決めていくから。とりあえず司会進行してもらう委員長からな。
立候補するやつは?」
黒板に学級委員長 男女 と書いて、土井先生は生徒を見回した。
「はい、俺やります!」
僕の後ろの男の子が手をあげた。周りの反応をみると、初等部にいた頃から学級委員長をしていたようだ。
男の子たちは自分がやらなくてよくなったから、皆ほっとしている。…なにかしらやらないといけないんだと思うんだけどなぁ。委員会。
「じゃ、男子は野本。今から司会よろしくな。次女子…だれかしたいやついるか?」
「…女子の立候補者はなしですね。どうします?推薦にしますか?」
「う〜ん…それだとかわいそうじゃないか?」
「でもこのままだと誰もでないままじゃないですか」
「本当にいないのか?
…じゃあ俺が独断と偏見で決めさせてもらうぞ?」
そういうとクラスメイトからは一斉にブーイングが飛ぶ。
「はいはい、しょうがないだろ?立候補者がいないんだから。
…女子は学年トップで編入の二郭!編入生なんだからもっと前にでて友達つくれよ〜」
「…はい」
予想はしていた。笑う先生に、懐かしさで泣きそうになりながら、僕は前へ出て行く。
「じゃ、野本と二郭。この時間の司会進行よろしく」
『伊助、放課後、社会化準備室でまってる』
チョークを渡されたときに聞こえた声は、昔懐かしい矢羽音だった。
「伊鈴ちゃん、迎えに来たよ」
待ち遠しかった放課後。社会化準備室に向かおうとドアをあけた僕の前にたっているのは、幼馴染の精ちゃんだった。
教室に残っていた女の子たちにざわめきが走る。
「…ごめん、精ちゃん。私ちょっと用事があって…」
「え?テニス部の見学にきてくれるって朝言ってただろう?」
「うん、そのつもりだったんだけど…でもマネージャーとかもやるつもりないんだし、ほかの部活も見学したいかなって思って」
早く土井先生の下に行きたくて逸る気持ちを抑えながら会話してると、そこにクラスメイトが駆け寄ってきた。
「幸村ぶちょーだ。なんで1年のクラスにいるんスか?」
「ああ、赤也。ちょうどよかった。一緒に部活行こうか。
伊鈴ちゃん、これは今年の新入部員予定の切原赤也。赤也、この可愛い女の子が僕の幼馴染の二郭伊鈴ちゃんだよ」
「え、精ちゃん2年生で部長なの!?」
「うん、立海は強い選手が上にたつんだ」
「部長、これってひどくないすか…二郭は知ってますよ、学級委員長になってましたから!」
「へえ、学級委員長なんてすごいね、伊鈴ちゃん。じゃ、そろそろ部活行こうか」
「そうっすね!部活!」
「ちょっと!精ちゃん、私用事が…!」
嬉しそうに笑う切原君と、がっちり僕の腕をつかんだ精ちゃんに挟まれて、僕はテニス部へと連れて行かれたのだった。
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テニスは学生時代によんだきりなので、あまり覚えていません…
間違った設定があってもスルーして下さい…。