dear partner  01
 prologue





僕は所謂“輪廻転生”というものを体験したらしい。
痛みで頭がおかしくなるかと思ったら、光が目に入ってきて。
わたし≠ヘ生まれた。



「伊鈴?もう幼稚園のバスがくるわよ?」

絵本を読むふりをしながら、物思いにふけっていると今の母が玄関から呼ぶ声がした。
どうやら思っていた以上に時間は過ぎていたらしい。

正直言って大人の記憶がある僕が、4歳5歳の中に混ざるのはとてつもなく大変なのだ。
行きたくない。
だが行かないわけにもいかない。
幼児のように、行きたくないと駄々をこねることも僕には無理だからだ。

「伊鈴、ほら早くして!」
「はーい!」

子供のように返事するのもなれたものだなぁと自分でも感心する。
でもやっぱり無理をしている訳だから、ぼろは出る。
でるんだけど…

「精ちゃん、弦ちゃん、おはよー!」
「おはよう、伊鈴ちゃん」
「うむ、おはよう」

お隣同士の幼馴染たちは、まあ1歳年上といっても恐ろしいほど大人っぽい。
真田弦一郎くんなんて、5歳にしてこの貫禄はすごい。
見た目はかわいい幼児…にみえなくもないんだけどなぁ。
喋り言葉が完全におじさんだもんなぁ…
精ちゃんは精ちゃんで、考え方が大人すぎてたまに僕でもびっくりする。

そんな幼馴染がいるから、僕の異常性は完全にどこかいってしまっていた。




異常性が周りの家族や大人には分からないからといって、幼稚園に行けば年相応の子供ばかりなのだ。
自然と僕たち三人は浮くことになる。
その為、僕たちはいつも三人で遊んでいた。

その筈だったけど、今日は違っていたらしい。

「ねえねえ、いすずちゃんはせいちゃんがすきなの?」
「けっこんしたい?」
「あのね、わたしもせいちゃんがすきだからね、けっこんしたいの」

どうして女の子は恋の話が好きなんだろう。どうも精ちゃんは人気があるようだ。仲のいい僕を牽制しにきたらしい。
…まだ4歳なのに、最近の子は早熟だと思う。
そして弦ちゃんの名前が出てこないところが、結局男は顔なのかなぁと思わせる。
別に弦ちゃんの顔も悪いわけではないが、隣に精ちゃんがいるとどうしても見劣りしてしまう。

3人の女の子は、ひたすら自分は精ちゃんのどこが好きか話した後、去っていってしまった。
そこはまだ4歳なんだろう、気に食わないからといって陰湿ないじめに発展するわけでもないらしい。

「伊鈴ちゃん、大丈夫だった?」
「…精ちゃん」

気配でいたのは気がついていたが、なかなか出てこないから係わり合いになるつもりはないとふんでいたのに。
遊具の影から出てきたのは精ちゃんだった。

「気にすることないよ。僕は好きで伊鈴ちゃんといるんだし」
「…気にしてないよ?それよりおもちゃかたづけちゃお?」
「ふふ、そうだね。伊鈴ちゃん、一緒に片付けよう」

笑った精ちゃんの顔は、在りし日の鉢屋先輩を思い出させる。
あの悪戯を思いついたような悪い表情。
きっと標的にされるだろう弦ちゃんやあの女の子たちを思い、心の中で合掌した。
そういう笑いをする人間には逆らわないことにしているのだ。

…庄ちゃんも大人になってからしていた笑いだから。





ふとしたときに、皆を思い出す。
また会えるのか、それとも一生僕は一人のままなのか。

分からないまま時はすぎていくけれど。


ぼくはきみをわすれることはできないとおもうよ、しょうちゃん。





(在りし日の思い出は褪せることなく)




    

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