*頂き物【文】* | ナノ



Déjà vu

並んで歩く夕暮れ。右を見ればコウちゃん。左を見ればルカちゃん。

なんだろう、胸がソワソワする感じ。どこかで感じたこの雰囲気、どこだっけ?


『Déjà vu』



手に持った買い物袋。今日は二人のお家で鍋パーティをする予定で仲良く買い物……だったのに今はコウちゃんもルカちゃんもお互いそっぽを向いている。

なんでか?って…それはスーパーでの食材選びで二人の意見がパックリと割れてしまったから。

お肉好きのコウちゃんにお魚好きのルカちゃん、お鍋の中をどうするかってなったらお互いが譲らなくて。

私が両方入れたら?って言っても予算オーバーするからの一点張りで…。だけど一向に決着が着かないから私が少し大目に出して両方買ったのだけどそれが二人共よく思ってないみたい。

「てめぇが言う事聞かなねぇから」

「コウが我侭言うから」

「あはは、私も両方食べたかったから、ね?」

「「美奈子…」」

あれ?またそっぽ向いちゃった。やっぱり男の子は女の子に多く出されたりするの気にするのかな?全然私は気にしないのに。

どっちかがムッツリしながらお鍋するよりみんなでニコニコしながら囲むお鍋の方が絶対美味しいじゃない?

二人が荷物を持ってくれて手持ち無沙汰になった両手を弄りながら不機嫌な横顔を二つ見上げてみる。やっぱりソワソワするな、なんだろう。

沈黙が続く帰り道、私はその沈黙に便乗して記憶を必死に手繰り寄せてみた。掴めそうで掴めないその記憶は、思いがけない所で手に届いた。

ガッ。

考え事をして躓いた私を二人の手が引き寄せてくれる。

あ。あの時に似てるんだ…。

そう、あれはまだ私達が小さい時。教会でかくれんぼをよくしていた時だ。お腹がすいて駄菓子屋さんに行ったっけ。

「俺はこのスナックがいい」

「俺はこの甘いやつ」

でも二人の持っていたお金を合わせてもどっちかしか買えなくてケンカして、結局私の持っていた分を足して両方買ったんだ。

「二人とも一口頂戴ね」

そう言って笑った私を見つめ返す二人は口を一文字に結んで少し俯いていた。これでニコニコいつも通りかな?って思ってた私だけどそうはいかなくて、二人はずっと剥れたまんま。

どうしたら仲直りしてくれるんだろう?って考えて歩いていたら転びそうになって二人が助けてくれて……それで……。
「コウちゃん、ルカちゃんありがとね」

私は手持ち無沙汰だった両手を二つの大きな手に伸ばした。あの時のフワフワした手とは違うゴツゴツした男の人の手。だけど変わらずに私の手を柔らかく握り返してくれる。

「はい、仲直り♪」

そして私は握った二人の手を自分の前でくっつけて笑ってみせた。

「……クッ」

「……プッ」

すると二人とも肩を揺らし始めたかと思うと一気に爆発して声を出して笑いだす。

「アハハ、本当、俺達変わってないというか、進化してないね」

「覚えてた?私もね、今さっき思い出したばっかなんだけど」

「ククッ、俺は今ので思い出した」

「私はあの時どうしたらいいかわからなくて咄嗟にやったけどコレで仲直り出来たんだよね」

「ま、ガキだから単純だな」

「そしたらお兄ちゃん、今もガキじゃん」

「反論出来ねぇな。ケンカの内容も大体変わってねぇし」

そう言ってもう一度声を出して笑う私達。

「でも美奈子は昔から俺達を甘やかしすぎだよね、だから俺達は子供のまんまなんだ」

「私はそんなつもりないんだけどなぁ」

「ま、俺達も甘えすぎって事だ」

「へぇ、甘えてくれてるんだ。なんか嬉しいな。いいよ?お姉ちゃんって呼んでも」

「ばーか」

「俺はお姉ちゃんって呼ぶ♪」

「ふふ、子供でもいいよ、ケンカしてもいいよ。お姉ちゃんはいつまでも真ん中で二人の手を繋いで仲直りさせてあげるからいっぱい甘えて、甘えて♪」

一瞬少し困ったような顔でする二人、だけどすぐに綻ぶと私の手をギュッと握った。

「それじゃ困んだけどな」

「負けないよ、お兄ちゃん?」

「ん?なんの話?」

「お姉ちゃんには内緒」

「ま、そうゆうこった」

「仲間はずれ禁止!!」

子供みたいにプラプラと両腕を揺らして帰る夕焼け道。伸びる影はあの頃と変わらずに一直線。これからもずっと続きますように。




END


ばんび×ばんびのもみじ様から相互記念に戴きました。

兄弟とバンビのやり取りが可愛い///

素敵な小説をありがとうございました!!
拙いサイトではありますが、よろしくお願いしますm(_ _)m

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