VS!! 「旬平くん。今帰り? 一緒に帰らない?」 「…? 美奈子ちゃん!! 全然OKだし! ていうか、あんたから誘ってもらえるとかマジ嬉しい!!」 「良かった」 「じゃあさ、喫茶店寄ってかね? なんか、新しいメニューが増えたみたいだし。程よい甘さで女の子に大人気らしいよ?」 「うん。それだ!! 早く行こ美奈子♪ ……と、オマケのニーナ」 「…………」 * * * オレの前に座るのは美奈子ちゃんと…どういうつもりか付いてきた琉夏さん。 「あの〜、なんで琉夏さんまで一緒にいるんスか?」 「はい。美奈子には苺あげちゃう。あ〜んして?」 「自分で食べれるよ?」 「いいから、いいから♪」 美奈子ちゃんの隣の席を陣取ったのを良いことに、琉夏さんは美奈子ちゃんを独占しまくってるし!! 「あの〜、オレの話聞いてます?」 「聞いてるよ? 喫茶店行こうって行ったのニーナの方じゃん。だから、俺も来ただけだよ」 「いや、オレが誘ったの美奈子ちゃんだけで……うわ、聞いてないし…」 結局、琉夏さんは美奈子さんを独占し続けた。 * * * 美奈子ちゃんを捜して、校内をうろついていたら見間違えるはずのない後ろ姿を見つけた。幸いにも琉夏さんの姿は近くにない… 「美奈子ちゃん!! あのさ、今度の休み空いてる?」 「旬平くん。空いてるよ」 「じゃあ、商店街行かね?」 「ふふっ、いいよ」 * * * パネェ…なにがって今日の美奈子ちゃんのファッション!! 流行をバッチリ抑えてて、それでいてオレの好みにもバッチリ/// 「旬平くん? 聞いてる?」 「ん? ちゃ〜んと聞いてますって!! どっちがいいかって話でしょ? 美奈子ちゃんは色白いから、こっちのハッキリした色のがいいと思うぜ? ほら、試着してみなよ」 * * * 「ありがとうございました」 店員に見送られて、俺と美奈子ちゃんは店を出る。 「じゃあ、次は旬平くんの服を見に行こうか?」「うん、でもその前に昼飯…「美奈子〜!!」…ゲッ…」 「琉夏くん!!」 出たよ…しかも、今日は… 「よう、買い物か?」 兄弟揃って…… 「うん、二人は?」 「こっちは買い出しだ」 琥一さんはそう言って面倒臭そうにビニール袋を少し持ち上げた。 「美奈子、今日の格好、なんか派手じゃない? オマエはナチュラルな方が似合うよ?」 「そうかな? 旬平くんは似合うって言ってくれたんだけど…」 「…あ、ニーナもいたの?」 「…最初からいましたよ」 今の絶対ワザとだろ!? 「あの、今からオレと美奈子ちゃん、昼飯食べに行かないといけねーし? そろそろ…」 よし、これで… 「いいなぁ。コウ、俺たちもお言葉に甘えてご一緒しちゃおうよ」 誰も誘ってねーよ!? どんな聞き間違い起こしたら、そんな解釈になんの!? 「てめーは俺と買い出しだ」 琥一さん、ナイス!! 「コウ、本気? このままじゃ、美奈子が…イテテテ!!」 琥一さんは普段自分が大迫先生にされてるように琉夏さんの耳を引っ張って歩き出した。うわぁ、痛そ〜。 「じゃあね、コウくん! 琉夏くん!」 ニコやかに手を振っている美奈子ちゃん。もう、そんな姿もマジカワイイし! パネェ!! 「……おう。じゃあな」 「…? コウ、どうかした?」 「いや、なんでもねぇよ。ほら、行くべ」 (ククッ…あいつ、良い顔して笑ってやがるな) * * * 「ねぇ、コウ。心配じゃねーの美奈子のこと」 「わかってて、オマエに邪魔される美奈子のことか?」 「だってさ……」 * * * 「あれ、ニーナじゃん」 聞き慣れた声に振り返れば琉夏さんがそこにいた。 「…あぁ、こんちは〜。なんか用スか? オレ今急いでて…」 「美奈子なら、いないよ?」 「えっ、ウソ? マジで?」 「美奈子、風邪引いちゃって今週いっぱい来れないって」 あれ…… 「…琉夏さん、嘘っスね?」 「いやいや、ホントだって」 「じゃあ…琉夏さんの後ろから歩いて来てる人は誰ッスか?」 風邪で今週いっぱい来れないはずの美奈子ちゃんが笑顔でこっちに歩いてきた。 「あれ?」 とぼけやがった。 「二人ともどうかしたの? ……まさか喧嘩?」 「違うって! あっ、美奈子今度の休み、動物園行こうよ」 「あっ、ズリィ!! オレが誘うつもりだったのに!!」 「早い者勝ちだろ」 嘘まで吐いてオレを美奈子ちゃんから遠ざけようとしたり…琉夏さん、本気かよ…でも、オレだって負けられねーし!! 「美奈子ちゃん、オレと行かね?」 「ニーナ、順番って言葉知ってる? 美奈子、俺のが先に誘ったんだから行くなら俺だよね?」 ちゃっかり、美奈子ちゃんの両手を握って縋る琉夏さん。オレが凄めば、スゲー怖い目で睨んできた…負けねぇし!! しばらく、無言で睨み合う… 「もう、喧嘩しちゃダメだよ!! そんなに動物園に行きたいなら三人で動物園行けばいいよね。それなら、いいでしょ?」 いや、いい訳ないから!! 「じゃあ、当日はバス停前に集合!! 遅れちゃダメだよ?」、「私、お弁当作ってくるね♪」…そんなことを言って去っていく美奈子ちゃんに 「美奈子、おにぎりはタラコのにしてね!!」 と、琉夏さんが要望を出していた。 …ちょ、マジで三人で行くの? 呆然としてたら、琉夏さんも去っていった。怖い顔でオレを一睨みして。 ……ヤダヤダ。 * * * そんなこんなで、マジで三人で動物園を回ってる。 レッサーパンダの場所に来たら、琉夏さんが 「あれ、あそこにもニーナがいる。こっちにもニーナがいる…どれが本物かわかんねぇ!」 とか大爆笑してきた。 「でも、レッサーパンダ可愛いよ」 美奈子ちゃん、それフォロー? でも男として「可愛い」は複雑なんですけど……。 * * * 「ちょ…琉夏さん、それオレのおにぎりでしょ!?」 「だって俺のもう、食べちゃったし。ニーナ残してたみたいだから」 「もう、喧嘩しなくても大丈夫だよ。まだ、たくさんあるから」 * * * 「あっ、美奈子、見てみ? コウがいるのかと思ったらゴリラだった」 「もう、またそんなこと言って…コウくんが聞いたら怒るよ?」 「琥一さん、今頃くしゃみしてんじゃないっスか?」 * * * 「はい、美奈子ちゃん笑って〜!!」 「バンビがバンビとツーショット…いいな。可愛いさ倍増。ニーナ、俺にも焼き増ししてよ」 「いいっスよ」 * * * 空が茜色に染まり、もうすぐ閉館時間という頃、オレたちは動物園を後にした。 「楽しかったね〜♪」「ね〜♪ ニーナがたくさんいたな。あっ、美奈子の隣に脱走したレッサーパンダが……」 「……まだ、そのネタ引っ張るんですか?」 珍しい組み合わせの三人デートで、最初はちょっと気が引けたけど…なんだかんだで、今日一日、結構楽しかった。 * * * 動物園を出た頃は茜色だった空も美奈子ちゃんの家に着く頃には、すっかり藍に染まっていた。 「二人共、ありがとう。また、明日ね?」 「うん。また明日な♪ 今日は疲れだろうから、ちゃんと休まなきゃダメだよ?」 「またね、おやすみ美奈子ちゃん♪」 * * * 美奈子ちゃんがいなくなって野郎二人の帰り道。琉夏さんはさっきまでのテンションが嘘みたいにだんまりだし……空気重てぇ!! 「…ま、まぁ、最初はどうなることかと思いましたけど、結構楽しかったっし、来て良かったみたいな?」 「ホントだな。俺と美奈子のデートにオマエが割り込んで来たときは俺、スゲー困ったもんな」 「はぁっ!? いや、邪魔してきたのアンタの方だし!!」 確かに約束は先越されたけど……そもそもアンタと美奈子ちゃんは、そういう関係じゃねぇじゃん!! 幼なじみってだけで美奈子ちゃん独占とかおかしくない!? そう思ってたら、実際口に出てた。 「ニーナは心が狭いな〜。そんなヤツに美奈子は任せられない。コウが認めても俺は認めない」 認めないって…… 「あ〜! ちょっと琉夏さん!! やっぱり、アンタ、わかっててやってるでしょ!?」 「えっ、俺が何をわかってんの? なんかやった?」 すっとぼけた振りしやがって…。今、自白してたじゃん!! 「だ〜か〜ら〜……俺は、美奈子ちゃんのことが好きなんです!!」 って、なにハッキリ言っちゃってんの俺…なんか誘導尋問されてね? もう、こうなったらヤケだ! ハッキリ言ってやる!! 「アンタがライバルで、どんなに邪魔されようとも、諦めねぇし絶対に引かねぇからな!!」 …あれ? 琉夏さん、なんで急に真顔? まさか、オレ殴られたりするんじゃ…… 「……ふ〜ん、じゃあ、頑張れよ少年。ヒーローは頑張る泣き虫な子供の味方だからね。さらば!! あっ、今度、昼飯奢って!!」 …………… 「…はぁ!? 俺、別に泣き虫じゃねぇし! 昼飯も奢らねぇから!!」 いつも以上に理解に苦しむ言葉を残して琉夏さんは走り去っていった。 もしかして、オレの恋を応援してくれるってことだったり? * * * 「あっ、旬平くん。今度の日曜日に映画に行かない? 琉夏くんに映画のチケット2枚貰ったの『ニーナ誘って行ってこれば?』って……どうかな?」 琉夏さん…アンタ、やっぱり…… 「うん、いいよ。ってか、美奈子ちゃんからの誘いを断るとかありえねぇし!! で今は上映してるのなんだっけ?」 「…え〜っと、今はねホラー映画『USHIRO 〜丑牢〜』だね、再上映してるみたい」 VS!! END 〜あとがき〜 30000hit・キリ番を踏まれたゆー様に捧げます。 お待たせしました!! 書いた後に気付いたのです…時期的にニーナと『USHIRO〜丑牢〜』観に行くのは不可能だと…。再上映っていうご都合設定で勘弁してくださいm(。 。;)m ゆー様、リクエストありがとうございました!! お持ち帰りはゆー様のみでお願いいたしますm(_ _)m
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