*捧げ物【文】* | ナノ



おめでとう


ー時刻はすでに深夜ー

本来ならすでに眠ってる時間に私は1人でリビングのソファに腰掛けていた。

落ち着かなくて、ベランダから外を見れば、こんな時間なのに明かりが灯ってる家が結構あった。

私と同じように待っているのかもしれない……。
“彼”を応援してくれるのかもしれない。

*
*
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オリンピックの柔道代表に選ばれた嵐くんが日本を旅立って、数週間……。

本当は私も現地に飛んでいって、会場で応援したかった。

しかし、想像通りに嵐くんは反対した。
彼は絶対に私をマスコミに出させない。

「顔晒して、何かあったらどうすんだ?
俺がいつも守ってやれるなら守るけど、さすがに無理だから……美奈子はマスコミとか顔出すな」

……だそう。そうやって、嵐くんなりに私を守ってくれている。

だから残念だけど、私は遠い日本から彼を応援し、勝利を祈ってます。

* * *

初戦から準決勝までの放送は時間帯も親友ジャナカッタカラ私の家族や、嵐くんの家族、それに新名くんなど……よく見知った人たちと集まっては一緒にテレビ観戦し、嵐くんが勝利すると割れんばかりの歓声を上げた。

そして、嵐くんはこれから決勝戦に挑むのだ。

緊張して心臓が浮いてるような感覚が気持ち悪い。

落ち着かない気持ちを誤魔化そうとテーブルに置かれたスマホを手に取った。

徐にメール受信フォルダを開く……

ー絶対におまえのために金メダル持って帰るから待ってろー

……一時間ほど前に、嵐くんとやり取りしたメールの一文。

HDDのディスプレイが微かに光ったのが視界に入った。それは予約した番組の開始数分前、録画準備の始めた合図。

私は慌ててテレビを付けた。

*
*
*

高校生の時から嵐くんの柔道を見てきた。
あの頃もどっしりとした力強い構えだったけど、今はそれ以上に
力強いのが見てわかる。

相手の選手はとにかく一本決めたいらしい……忙しなくて攻撃的。
それは少なくとも私の知る“柔道”とは違うように感じた。

そんな忙しない動きは見てるこちらを、より緊張させ、手にはじんわりと汗が滲んでくる。

これまで、相手選手を映していたテレビ画面が嵐くんを映し出した。
画面の中の嵐くんは冷静に相手の動きを見ている。

冷静な嵐くんを見てると、それだけで不思議と私自身の焦りがなくなっていく。
画面越しでも、それは学生時代と変わらないらしい。

相手が一気に動いた!!

「……っ!!」
「……嵐くんっ!!」

次の瞬間、会場にドシンという音が響く。

一瞬、静まり返る会場……次の瞬間、割れんばかりの大歓声が会場を震わせた。

テレビに映されていたのは、立っている嵐くんと背負い投げを喰らい、床に仰向けになり、息を荒くしてる相手選手。

「……やっ、やりました! 不二山選手、柔道73kg級金メダルです!! 」

割れんばかりの歓声と拍手が鳴り止まぬ会場、両選手が互いに一礼したのを私は見た。

「金、メダル……嵐くん、本当に……」

ー絶対におまえのために金メダル持って帰るー

「私の、ために……」

*
*
*

メダル授与が始まった。
テレビカメラが金メダルを手にした嵐くんを映す。
嵐くんはそれに気付くとカメラに向かって金メダルを差し出した。

金メダルを左手に持ち、首にかけるストラップ部分は左手薬指に巻き付けられていた。

ようやく、彼が金メダルを勝ち得た実感が湧いて、涙が出てきた。


テレビ中継が会場から中継スタジオに切り替わった。
現地入りしてるアナウンサーや解説者、イメージタレントが先程のVTRを交えて、興奮気味に語っている。

どうにか溢れ出る涙を止めれた時に、スマートフォンが私のお気に入りの曲を流した。

ディスプレイに【嵐くん】の文字が光る。

電話に出る前に深呼吸をした。

この気持ちをどう伝えよう? なんて、言おう?

呼吸を整え、着信を受ける。そのほんの数秒の間に様々な言葉が、気持ちが頭によぎった。

うん、やっぱり最初に伝えよう……






END

〜あとがき〜

104000hit・キリ番を踏まれた方に捧げます。

正直、リクエストに沿えているかとても不安です(^_^;)

本当は嵐さん目線で進行させていこうと思い、プロットを組んだのですが、そうするとどうしても“アスリートの心情”がメインになります。
私自身、ほとんどスポーツと無縁にあり、こればかりはテレビを見ても難しく、捏造でどうにかなりそうになかったので、バンビ視点にしました。

あと、体重別の階級?ですが、嵐さんEDのスチルを見て“73kg級”にしました。

リクエストに沿えてなかったら申し訳ないです。

お持ち帰りは104000hit様のみでお願いします。

里夏

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