*捧げ物【文】* | ナノ



Beautiful Days


カラカラと窓を開けてベランダに出た。
洗濯物を干しながら空を見れば、天気予報通りの見事な快晴。まだまだ暑いながら、夏に比べて空が高くなったのがわかる。


Beautiful Days


美奈子が2人分の洗濯物を干し終えて、リビングに戻るとちょうど寝室から起きてきたらしい琥一と出くわした。

「おはよう、コウちゃん」
「おぉ……」

琥一は素っ気なく返すと、そのままソファにどかりと腰掛けて朝刊を開く。
美奈子は、朝食の用意を始めた。

琥一の仕事が休みの、とある日曜の朝9時のことだ。

*
*
*

「明日から、しばらく雨か……」
「秋は天気が変わりやすいもんね」

美奈子は琥一のマグカップにコーヒーのおかわりを注ぐ。

「あぁ……あれだ」
「?」
「せっかくだしよ……どっか、出かけるか?2人で」
「いいの? せっかくのお休みなのに?」
「ま、家に引きこもるだけが休日じゃねぇからな……おら、行くならとっとと支度しとけ?」

「うん!!」

* * *

ダブルベッドの上にカラフルな色合いの服を幾つか引っ張り出した美奈子は、着ては脱ぎ、また違う組み合わせで着ては脱ぐ行為を繰り返している。

すでに支度を終えた琥一はリビングのソファに座って美奈子を待っていた。
女性が支度に時間が掛かることを承知しているが、いつもより幾らか遅い。

「こっちのがいいかなぁ。でも、このパンツに合わせるなら……」

「美奈子、まだ……うぉっ!?」
「……っ、キャーッ!!」

琥一は慌てて寝室のドアを閉めた。

「ノックぐらいしてよ!!」
「悪かったよ。つかよぉ……オマエ、今更、下着見られたぐらいで騒ぐか? もっとスゲーことしてんじゃねぇか」
「/// コウちゃん!!」

ドア越しに怒声が飛んできた。

「クク……わかったから、早くしろ?日が暮れちまうぞ?」

* * *

ようやく、服を選んだ後は美奈子はメイクに取りかかる。
お気に入りのブランドの新色のアイシャドー、それに併せて買ったグロスを2色……それらをドレッサーから取り出し、また新たに生じた悩みにぶち当たる。

「コウちゃ〜ん! ちょっと来て!!」

「どした?」
「どっちの色がいいと思う?」

右手にオレンジ、左手にピンクのグロスを持った美奈子は
琥一に笑顔で質問した。

「あ? どっちでも変わんねぇだろ?」
「変わるよ? ねえ、面倒臭がらずに真面目に答えて」
「じゃあ、そっちだ。右手の……」
「オレンジだね」


琥一はリビングに戻らず、そのままベッドに腰掛けて美奈子を見ることにした。

高校生の頃はほとんど化粧をしていなかったように思う。
今でも十分、幼い顔立ちの美奈子だが、さすがに化粧をするとグッと大人びるものだから、どうにもドキドキして落ち着かない。

「コウちゃん、どうかした?」
「あ?」
「さっきからずっと私のこと見てるから」
「ハァ!? ……オ、オマエ、エスパーか何かか?」

こっそり見てるつもりが、見事に言い当てられた琥一の声が裏返る。
琉夏曰わく、“声が裏返るのは図星の証拠”

「フフフ、鏡に映ってるから」
「おぉ、そうか……。あれだ。オマエが遅ぇから待ってんだよ」

*
*
*

高校時代によく2人で来た森林公園は当時とほとんど変わりがない。
晴れた日の休日には家族連れやカップルで賑わいを見せている。

空いてる芝生に持ってきたレジャーシートを広げた。
美奈子は琥一の大きな靴の隣に自分の靴を並べて置く。
特別、小さい訳じゃないのに琥一の靴の隣に置くと子供の靴に見えておかしい。

ーコウちゃんの靴と赤ちゃんの靴を並べたらおもちゃみたいに見えるのかな?ー

「オマエ、なに笑ってんだ?」
「コウちゃん……帰りに赤ちゃん用の靴買ってこっか?」

「…………デキたのか?」

今さっきまで訝しがってた琥一の顔が、一瞬で真顔になった。

「なにが?」
「なにがって……今、靴がどうこうって……つまりだ。……ガキ……デキたのか?」
「…………えぇっ!?」

美奈子の素っ頓狂な声に周りの視線が集まり、美奈子は琥一に口を押さえられた。

* * *

「そもそも、オマエは紛らわしいんだよ。あんな風に言われりゃ、普通はそう思うだろうが」
「そうかな? そんな勘違いするのコウちゃんだけじゃない?」
「するんだよ。身に覚えがありゃーな……ったく、驚かせやがって……」


「コウちゃんは私に赤ちゃん出来たら嫌? 私、欲しいよ?」
「誰も、イヤとは言ってねぇだろうが」

美奈子がそっと琥一の手に触れる。

「そっか…赤ちゃん。可愛いだろうね」
「ククッ……俺に似なきゃな」
「コウちゃん似でも、きっと可愛いよ?」

それに応えるように、琥一も美奈子の手を握る。

「赤ちゃん産まれたら、コウちゃん、良いパパになりそうだよね」
「どうだかな?」
「フフ、きっとなるよ〜」



END

〜あとがき〜

102000hit・キリ番を踏まれたゆき様に捧げます。

同棲中でも結婚済でも大丈夫なようにしましたので、お好きな方に捉えてもらえれば……と思ったのですが、ラストのやり取りはやはり結婚済ですよねw

ほのぼのとした日常風景を意識したら、オチも盛り上がりもなくなってしまいました(^_^;) リクエストに沿えていればいいのですが……

もう一つの105000hitリクエスト分はもうしばらくお待ちくださいm(_ _)m

お持ち帰りはゆき様のみでお願いします。

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