*捧げ物【文】* | ナノ



温もりの共有


「おう。琉夏だったら自分の部屋にいるからよ、適当に上がれ」

美奈子がWestBeachの扉をノックしたら、すぐに琥一が扉を開けて、中に迎え入れられた。

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美奈子の元に琉夏から電話があったのは今朝、早くのこと……

「おはよ。琉夏くん、どうしたの?」
「「うん、おはよ。ねぇねぇ、今日ウチ来れない? 一緒に遊ぼ?」」

珍しく早起きしたらしくWestBeachに誘わた。

“俺、おとなしく待ってる。だから、なるべく早く来て?”


琉夏も琥一もいつもお腹を空かせてるから、出来る分だけおにぎりを用意した。
琉夏が好きなタラコ、琥一が好きなツナ。あと美奈子自身が好きな鮭。

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持参したおにぎりを1階のカウンターに置かせてもらい、美奈子は琥一と一緒に2階に上がった。

相変わらず散らかった琉夏の部屋。

しかし、肝心の琉夏の姿が見えず、部屋を見渡せばベッドの上に細長く盛り上がる毛布が目に入る。
それはもぞもぞ動いて、やがて、頭から毛布を被って防寒してたらしい琉夏がこちらを向いた。器用に顔だけが毛布から覗いている。

「いらっしゃい」
「琉夏の野郎、朝からずっとこの調子だ」
「そうなんだ…琉夏くん、おじゃましてます」

(本当におとなしく待ってた……)

変な所で感心していたら、琉夏がベッドの奥に移動した。

「美奈子、おいで。毛布の中で遊ぼ? 俺、暖めておいたから。ほら?」

琉夏はポンポンと自分の隣のスペースを叩いて美奈子を呼んだ。

「いつまで、ガキなんだか……じゃあ、俺は自分の部屋にいるからよ。美奈子、危なくなったら叫ぶなり呼ぶなりしろ」
「俺、今日はなにもしないよ? 引っ付いてたいんだ。美奈子、気をつけろ? コウの奴、エッチなこと考えてる」
「考えてねーよ!! そりゃテメェだ、テメェ!!」

琥一はガンガンと足音荒く階段を上がっていった。

「はい、お入り? ぬくぬくタイムの始まり始まりだ!」


* * *


美奈子が誘われるままに琉夏の隣に寝転ぶと、すぐに毛布が被せられる。

「本当だ。暖かい♪」
「じゃあ、頭から被っちゃえ!!」

分厚い毛布は光を遮断し、毛布の中は真っ暗闇。

「ジャ〜ン! 懐中電灯! スイッチオン!!」
「やだ。琉夏くん、顔怖いよ?」

顔の下から懐中電灯を当てるから、普段はキレイな琉夏の顔も恐ろしいことになっていた。
そう言われ、態と怖い顔を作る琉夏に美奈子はクスクスと楽しそうに笑う。ところが次の瞬間、ハッと笑いを引っ込めた。

「どうしたの? 本当に怖くなっちゃった?」
「……それ、私も怖い顔になってない?」
「うん、なってる」
「えっ、やだ! 早く消して!」
「大丈夫、すげーカワイイよ? こんな、オバケなら、俺捕まえちゃう」

「……キャッ!!」

琉夏がギュッと美奈子を抱き締めた。

「美奈子、ゲットだぜ!! ん〜、温かい……それに、いい匂いする」
「琉夏くんも甘い匂いがする……ホットケーキかな?」
「それだ。今朝、食べた」
「ちゃんとしたもの食べなきゃダメだよ?」


「昼飯のおかずは生姜焼きでいいか?」

外から聞こえた琥一の声に琉夏も美奈子も毛布から頭を出した。

「コウ、邪魔するなよ」
「じゃあ、テメェはおかずなしでいいんだな?」
「……えっ、ウソウソ。生姜焼きでいいよ! 美奈子もいいだろ?」
「コウちゃん、手伝おうか?」

毛布から出ようとする美奈子を琉夏が阻止する。
そんな弟を見て、琥一は溜め息を吐いた。

「オマエは琉夏の子守り頼むわ。出来たら呼ぶからよ」

琥一が階下へ降りてくのを見送ると琉夏はまた美奈子を毛布の中に誘ったのだった。


* * *


昼ご飯を待つ間、再び毛布の中に潜った琉夏と美奈子は暗い中、背中に文字を書いて当て合うゲームで遊んでいた。

「残念! 正解は……だっぴ(脱皮)でした!! はい、罰ゲーム♪ コチョコチョの刑だ!」
「ちょっ、また〜!? ひ、ヒャア〜!!」

ゲームは琉夏が変な単語を選ぶので、美奈子はなかなか正解出来ない。
外す度に罰ゲームとしてくすぐられていた。

「……はい。次は美奈子の番ね」
「「!!??」」

突然、毛布が剥がされた。
子犬や子猫のようにじゃれ合う琉夏と美奈子を覗き込む琥一。

「出来たぞ、メシだ」

*
*
*

「「ごちそうさまでした」」
「ごち」

元はダイナー(レストラン)だった1階の窓際に並ぶテーブルの一つに広げられた美奈子持参のおにぎり、琥一が作った生姜焼き……それらは、ものの15分で全てなくなった。
平らげられた皿は琥一の手に寄って片付けられる。

美奈子も手伝おうと立ち上がったものの、琥一に再び琉夏の子守りを頼まれたので席についた。


* * *


楽しそうに談笑する琉夏と美奈子。
それを聞きながら食器を洗う琥一は時々、おかしな発言をする琉夏にツッコミを入れていた。
その度に美奈子は楽しそうに笑う。

「あれ、コウ。どこ行くの?」
「あ? 部屋に戻んだよ。食器も洗い終わったしな」
「コウちゃん、お疲れ様」
「おう」

*
*
*

あれから、どれくらい経っただろうか?

琥一は自室でレコードを聴いていた。
音楽鑑賞に集中して気付かなかったが、さっきまで1階から聞こえていた琉夏と美奈子の声が聞こえない。レコードを止めれば、WestBeachは完全に静寂に包まれた。


出掛けたのだろうか?と琥一が階下に降りれば、琉夏と美奈子はまだそこにいた。

2人はピッタリと寄り添い、美奈子が琉夏の肩に頭を乗せているのが見える。
また、じゃれ合っているのだろう……しかし、微動だにしない。

琥一が思わず2人のサイドから覗き込むと、琉夏も美奈子もスヤスヤと寝ていた。琉夏はなんとも間抜けな寝顔を晒している。

そんな仲の良い2人を見て、琥一は上階に上がっていく。
靴底が階段を踏む“カンカン”という音はいつもより幾分その音はボリュームが低かった。

再び1階に戻ってきた琥一の腕には先程、2人が被っていた毛布。

「ったく、世話の焼けるコンビだな……おら、風邪引くぞ」



もりの



END
〜あとがき〜

59000hit・キリ番を踏まれたカナ様に捧げます。
大変お待たせしました!!

リクエストを元に作らせて頂きました。
……こんな感じでいかがでしょう?

返品可ですので、お気に召さない場合は遠慮なく返品してください!

お持ち帰りはカナ様のみでお願いしますm(_ _)m

里夏

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