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僕の意見 (音羽)


「美奈子は勉強熱心だね」

「えっ?」

抱えてきた本を数冊、机の上に置いて席につけば、向かいの席で待っていた慎之介さんにそう指摘された。

「それ……全部、料理の本だ」

指差された本の表紙にはわかりやすく、本の内容を示す文字が見える。

“ヨーロッパのお菓子”“世界のスープ”“アジアの米料理”

* * *

図書館に行く途中で慎之介さんに会った。

「図書館に行こうと思って……慎之介さんは?」
「僕も図書館に行こうと思って」
「奇遇だね!!」
「今、決めたんだ♪」
「えっ……?」
「本当はお店に行こうと思ったんだけど、ここで美奈子に会えてよかった。ほら、行こ」

* * *

慎之介さんが隠れることが出来るように、窓際から離れた壁際の席を選んだ。
幸いにも平日の図書館は人が少ない。

冷房が効いている館内、ゆっくりした時間が心地いい。

「秋の新メニューになりそうな料理、なにかないかな…って。……美味しそうなのある?」

慎之介さんは、わたしが持ってきたお菓子の本を一つ手にしてパラパラとページを捲ってる。

「全部美味しそう……でも、最終的に決めるのは僕じゃなくて美奈子でしょ?」
「お客様のご意見も訊かないとね?」

慎之介さんはふと何かを考え込むような表情になった。
食べたいお菓子を見つけたのだろうか?

「お客様……じゃあ答えない」
「えっ?」

意外な返答が返ってきた。

「美奈子……今、美奈子の前にいる僕はお客様なの?」

慎之介さんが悲しそうわ表情をして、見詰めてくる。

「ただのお客様とこんな風に図書館デートするの?」
「……そ、それは……」

どう、答えていいかわからずに視線を机に置かれた自分の手に移す。冷房で冷たくなった手。
すぐに、自分の手は見えなくなった。慎之介さんの手が重ねられたから。

思わず、視線を上げると真剣な瞳がわたしを捕らえる。


「困らせてごめんね。でも、お客様としてじゃなくて、今、美奈子とこうして図書館デートしてる僕の意見を聞いてほしいんだ」

「じゃあ、慎之介さんの意見を聞かせて?」





「甘いものだったら、なんでも♪ だから、ここに載ってるの全部追加してもいいと思うんだ」
「ふふっ、それは無理かな♪」

「さらに言うとね……甘いもので美奈子が作ってくれるなら、なんだって大好物♪」


END

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