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LUCA'Sキッチン


「……でさ、やっぱり、ちょっとだけご指導してほしいなぁ……って……ダメ?」
「フフフ、いいよ。今度の日曜日空いてる? うちのキッチンで一緒に作ってみたらどうかな?」
「全然OK。よろしくお願いします。“先生”」

LUCA'Sキッチン

ビーフカレーを作ろうと思った。
給料が入ったし、コウにはいつも世話になってるから……ときには、お兄ちゃん孝行しようとしたわけだ。

そう思った日に、買い物帰りだった美奈子と運命的にバッタリ会ったから“ビーフカレー”の作り方を伝授してもらった。
帰って、美奈子の字で丁寧に書かれたメモを見ながら作った。

その夜、不思議なことが起きたんだ!
なんか野暮ったい感じの焼肉になった!!

しかも、コウの奴「焼きすぎだ」とか文句言ったんだ。酷いだろ?

で、美奈子に電話で愚痴った後にレッスンをお願いした。
こういうとき、嫌な顔せず引き受けてくれる美奈子は本当に天使だと思う。
あ、でも俺以外の奴からの頼みは引き受けないように言っとかないとな……。

*
*
*

「ホントにいいの? 材料用意しなくて? ホントに?」
「お母さんが「琉夏くんたち、生活大変だろうから」って……はい、エプロン」

美奈子から、「なにも持って来なくていい」って言われたから、とりあえず手ぶらで来たら、材料が全部用意されてた。天使のお母さんも天使だった。

「フフ、夕ご飯の分も作ってね、って意味でもあるんだけどね?」

そう言って、美奈子は水玉模様のエプロンを着用する。
後ろ手にリボンを結ぶ姿にグッときた。

「じゃあ、はじめよっか?」
「先生、よろしくお願いします」

* * *

―カレーの作り方って言っても、うちの作り方だからちょっと違うかもしれないけど……―

そう言って、まずは大きな鍋に湯を沸かすらしい。

美奈子が取り出した重い鍋を受け取り、水を入れてコンロに置く。

「ありがとう。じゃあ……火をつけ……あれ? おかしいなぁ」
「どした?」
「火がつかないみたい……エイ!」

美奈子と2人で困り果てるも、うちはカセット式のガスコンロだから、どうしていいかわからない。「……あっ」

ちょっとゴメンネ。と美奈子がコンロ下の戸を開いた。

「……ごめんね。元栓、閉まってたみたい……///」

照れ笑いしながら、顔を上げた美奈子がもう一度、点火させるとちゃんと火がついた。


次は……“お湯が沸く間にジャガイモやニンジンを切る”

「私、こっちで玉葱炒めてるから、お願いね」
「了解。ところで……皮をピャーって剥くのある?」
「ピーラー? はい」

―シュッシュッ、シュッ―

「この芽を取る部分考えた人、俺尊敬する」
「便利だよね、これ……名前はわからないけど」

ジャガイモとニンジンをポコポコ言い始めた鍋に入れる頃には、玉葱の焼けるいい匂いがキッチンを満たし始める。

「じゃあ、いよいよ牛肉の登場です!」
「待ってました!!」

冷蔵庫の中から、牛肉の塊がこんにちは。

「琉夏くん、次はこのお肉を一口大に切って、塩コショウをまぶしてね。切り終えたら、玉葱と一緒に炒めるから」

* * *

「こんな感じ?」
「……ちょっと大きすぎかな…たしかにコウちゃんなら、一口でいけそうだけど」

「美奈子、見てて! 奥義!! 塩コショウ、ファサーッ!! どう? 俺、カッコよかった?」
「ど、どうかな……」

あれ、やっぱり、オリーブオイルverのがよかったか?

* * *

鍋の中がボコボコと沸騰していて、ジャガイモとニンジンが動いてる。
隣では美奈子が玉ネギと一緒に、さっきの肉を炒めてる。ジュージューという音と肉の
焼ける匂い。お腹が空いてきた。

肉の表面が焼けた頃にフライパンから玉ネギと牛肉が鍋の中に投入された。

「カレー粉、もう入れる?」
「まだダメです。もう少し、お肉と野菜に火を通して、そしたら火を一回消して、それからルー入れるの。オタマの上で溶かすとダマが残らないからね」

カレーって簡単だと思ってたけど、結構メンドーなんだな……

「もう大丈夫」と美奈子が火を消した。
教えられた通りにオタマを手にして、カレー粉を溶かす。メンドーだけど、塊のカレー粉がドンドン解けてくのは面白い。

調子に乗って、一つ解けてはカレー粉を入れてたら美奈子止められた。

「ふぅ……これで完成?」
「もう少し煮込むの。それとここで隠し味を入れます」
「もしかして、オリーブオイル入れる? 俺に入れさせて?」
「オリーブオイル入れたら、ギトギトになっちゃうよ?」

そう苦笑いして美奈子が冷蔵庫を開ける。

「正解は……牛乳とチョコレートでした!!」
「甘くならない?」

チョコレートの風味とミルク感たっぷりのカレーの味を想像したら、さすがの俺も食べれそうにないと思う。

「フフフ、大丈夫。そんなには入れないよ? ほんの少しだけね。あっ……でね、隠し味は無理して入れなくてもいいからね」

美奈子が「このくらい」と言って、カレーの中に絶妙な量を入れた。
失敗0を目指すなら、隠し味はナシの方向で行った方がいいな……。

*
*
*

「というわけで……ビーフカレーの完成です!!」

最後に薄く切ったマッシュルームを入れて、少し煮込んだ末に大きな鍋いっぱいのビーフカレーが完成した。

「先生。ありがとうございました!!」
「フフフ、どういたしまして。少しは参考になった?」
「なったなった。スゲーなった!!」

結局、ほとんど美奈子が作ってくれたんだけどね。

「今日はコウちゃん、夜もバイトなんでしょ? せっかくだから、カレー食べていったら?」
「ありがたき幸せ」
「それと、余った分はお家に持ち帰っていいからね。2人とも、ちゃんとしたご飯食べてないみたいだし」

たぶん美奈子は俺たちの食生活を考えて、最初から余るくらい大量に作ったんだと思う。

*
*
*


月明かりに照らされた道をWest Beachに向かって歩く。
歩くたびにガサガサ鳴る音の原因はカレーの入ったタッパーを数個を入れてある紙袋。

初夏の夜風はまだ冷たいけど、それが気持ちいい。

「俺が作ったカレーだ!! って、このカレーを出したらコウのやつ信じるかな? う〜ん……ハハハ! 細い目を見開いてスゲー驚いた顔したりして!!」

なんだかウキウキしてくる。
美味しいカレーと美奈子の可愛いエプロン姿で腹も心も満たされてるからかな?

今日は空気が澄んでて、月がキレイだ。


END

〜あとがき〜
タイトルの元ネタは“まず、オリーブオイル〜仕上げにオリーブオイル。オリーブオイルをかけて食べる”あのコーナーです。

里夏

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