A 〜アラシの場合〜 公園通りで買い物を揃えた私たちは公園内の一角で昼食を楽しんでいた。 「〜で、そのときのセイジさんの逃げ方がマジパネェ……って、アラシさん聞いてます?」 「……ん、聞いてるぞ? ねみい……ふぁ〜ぁ」 「アラシさん、食欲が満たされたら次は睡眠欲って、欲望に正直すぎますって……」 ―ズサっ!!― コンノと2人で食べ終わった食器を纏めていたら、何かが倒れる音がした。 「えっ、ニーナくん!?」 音のした方で、アラシとおしゃべりしてたはずのニーナが倒れていた。 * * * 「心配しなくても大丈夫。ニーナくん、寝てるだけみたいだからね」 とりあえずは一安心。 突然、眠ってみんなに心配をかけたニーナは今は荷物の側に寝かされている。 昼食の片付けが再開された。 * * * 「はい、洗ってきたよ」 少し離れたところにある水道に食器を洗いに行っていてルカとコウが戻ってきた。 「フフ、おかえり……どうしたの?」 「どうしたもクソも、バカルカのせいで全身水浸しだ……」 忌々しげに食器を置くとコウは公園に備え付けられてる木製の椅子に腰掛けた。 「コウ、逃げるなって!」 「ついてくんな、バカ」 ルカも後を追う。 「押忍。おまえら休憩か?」 「はあ……また、疲れる奴が来やがった」 椅子と同じ木材のテーブルを挟んだ対面にアラシは腰掛ける。 「そんなに疲れるんなら、柔道やって体鍛えれば……ふあ〜あ、ダメだ。今日は、ホントにねみぃ……」 「じゃあ、寝てろ……うおっ!?」 「濡れたままだと風邪引くでしょ?」 タオルを片手に引っ掛け、濡れたままのコウを抱き上げて日向に移動。 「ああ!! コウ、ズリィ!! ねぇ、俺もそれやって!」 「もとはテメーのせいだろうが!!」 「いいな〜。俺も濡れてくるべきか……」 ―ドサッ!!― “ポリシー”云々と文句をいうコウを無理矢理、タオルで拭いているとまた、誰かが倒れる音がした。 椅子から転げ落ちて寝てるルカとテーブルに突っ伏して眠るアラシ。 「……なんなの……」 「病気とかじゃないと思うけど……」 「コンノ、おまえ、こういうの調べるの好きだろ? 解明しろよ」 「……んぁ? あれ、オレ寝てた?」 「ニーナ、目が覚めたの? 良かった〜」 * * * 突発的な眠気に襲われる謎の事態はその後も何度か発生した。 この数日後、センターに寄った際にジョーイさんに指摘され、ようやくアラシが“あくび”を習得していた事実が判明したのだ。 ※あくび…次のターン終了時に相手を「ねむり」状態にする。それまでに交代すると効果はない。 ************ 〜ニーナの場合〜 次のジムに向かうために街道を歩いていたら、トレーナーにダブルバトルを挑まれた。 「いくぞ! ニーナ!!」 「押忍! アラシさん!!」 今回バトルに出るのは先頭を歩いていたアラシとニーナ。 最近、ルカとコウに見せ場を取られがちだったアラシははりきっている。 「ふぁ〜……がんばれよ〜」 「やられても、俺らが控えてるからよ……ククッ」 「なんか、トゲのある言い方っスね……」 「気にするな。今は目の前の敵に集中しろ」 「お、押忍!!」 * * * いつも一緒にトレーニングをしてるだけに、アラシとニーナのコンビネーションは抜群!! 私が指示を出さなくても勝手に自分たちで動いてるのはトレーナーとして、ちょっとどうかと思うけど…… 相手の手持ちは6体。 だけど、アラシとニーナの前に残り1体にまで追い詰めた!! 「あと少しだよ! がんばって!!」 「まかせろ!!」 右手を上げるアラシに安心して、ふと後ろを向けば、出番がないルカはゴロゴロしていたし、コウは毛並みを整えていた。コンノとセイジは木陰で座って観戦していた。 「うっ!?」 「アラシさん!!」 慌ててダブルバトルに視線を戻したら、相手の攻撃がアラシにクリティカルヒットしたらしい。 「大丈夫!?」 慌てて、バッグから“いい傷薬”を出そうとしたけど「こんなのどうってことない」とアラシ自身に止められてしまった。 「ちょ、アラシさん……無理しちゃダメですって! そうだ、オレ“てだすけ”しますから!!」 「てだすけ?」 「“てだすけ”させるとアラシさんの攻撃力が上がりますから、それでズバっと倒しちゃってください!!」 「じゃあ、“てだすけ”いきますよ!!」 ―ニーナの“てだすけ”発動― 「ニーナ、邪魔するな!! 気が散る!!」 「えっ?」 そう言いながら、アラシは相手に強烈な一撃を喰らわせ、見事に勝利したのだ。 「最後の一撃はすごかったね。ニーナの“てだすけ”が効いたのかな?」 「わかんねぇ。でも、なんかリズム乱される感じでイラッとした」 「うわ……それで攻撃力上がったとか酷くないっスか?」 ※てだすけ…てだすけした味方の技の威力を1.5倍にする。 〜2012年9月、10月の拍手文〜
|