痛いの飛んでいけ!! 一作業終えて、ふと背後で遊んでいるはずの花凛の様子を見たら、遊び相手のぬいぐるみだけを残していなくなってた。 そのまま、開け放された部屋の入り口を見る……思った通り、廊下側から花凛が顔を覗かせて俺をジーッと見てた。 花凛の最近お気に入りの遊び。 ちょこっと顔だけを覗かせて、見つかると逃げる。 追いかけるとキャッキャッとハシャいで、追いかけないと、戻ってきてもう一度顔を覗かせる。 花凛は構ってちゃんだからね。 さて、付き合ってあげようかな? 「あっ、花凛見っけ!!」 「あい〜!!」 ほら、さっと顔を引っ込めてハイハイで駆け出した。 俺が本気出したら、すぐ花凛を捕まえちゃうから、超手加減して歩いて追い掛けてあげないと。 「待て待て〜」 「キャッキャッ!!」 * * * 「あれ……花凛、どこ行った?」 手加減し過ぎて見失った。 広くはない家の中、花凛を探して回る。 「花凛?」 返事がない。 まだ、ハイハイしか出来ないから、行ける範囲は限られてるはずなんだけどな。 一応、風呂場やトイレを見た。 やっぱりいない……。 そうだよな。花凛じゃドア開けられないもんな。 どうしよう……神隠しかもしれない。 まだ、ハイハイしか出来ない赤ん坊が突然家の中から姿を消すなんて神隠ししか有り得ない。 そう考えたら目眩がした。 ヨロヨロしながら、その場に座り込む。 「ぅ、うわ〜ん!! ぅあ〜!」 !! 突然、家中に響いた花凛の泣き声。 泣き声を頼りに急げば、辿り着いたのはさっきまで俺がいた部屋……ようやく見つけた花凛は椅子の前で泣いてた。 抱き上げても泣き止まずにわんわん泣いてる。 顔を見れば額が赤い。 そして回転イスが揺れてる……たぶん、イスに手を掛けたら回って、そのままイスで額をぶつけたんだ。 「大丈夫だよ。痛いのすぐどっか行くからな。ちょっと待ってろ」 花凛を抱いたままキッチンへ。 まだ、グズグズ泣きじゃくる花凛をあやしながら、熱が出たときの柔らかいジェルみたいのを探す。 「ふぇ〜」 「よしよし」 冷凍庫から発見されたジェルを赤く腫れた花凛の額に当ててやった。 一瞬、冷たさにビクッとなった姿がカワイイ。 泣いてた花凛も腫れた額に冷たいジェルが気持ちいいのか、すぐに泣き止んだ。 一安心だ。 俺は花凛を連れて、そのままリビングに移動した。 * * * あれから、10分。 痛みがなくなったらしい花凛はひんやりしたジェルの不思議な感触がお気に入りになったらしい。 ほっぺたにくっ付けてみたり、挙げ句チューしてる。 「花凛、パパにもチューして? ……痛っ!?」 顔を近付けたら、ジェルを投げつけられた。 「きゃ、きゃは!!」 ベチンと鼻に当たって落下したジェルは花凛の手の中に戻った。 赤ん坊の力って侮れないな……。 「花凛、投げちゃ…メッ! パパ痛い痛いだからね。メッ!!」 「メッ!」 「そうそう、花凛は物分かりのいい良い子だ……イッテ!!」 また、ジェルが顔面目掛けて飛んできた。 「キャイ〜!! メ〜、メっ!!」 * * * 「花凛ちゃん、おでこはもう大丈夫かな?(裏声)」 「あ〜、あ〜ぅ」 パペット片手に遊んでやれば、花凛はパペットのウサギに手を伸ばして話し掛ける。 「それは良かった!(裏声)」 ちなみに飛び道具と化したジェルは没収しておいた。 「ただいまぁ」 あっ、美奈子。 「花凛、ママ帰ってきたよ。おかえりぃ!」 「り〜」 「ごめんね。村井さんとこの奥さん、おしゃべりだから掴まっちゃった」 そういうば、回覧板回しに行っただけなのに30分以上経ってるな。 「花凛、ただいま♪」 「あ〜」 花凛が美奈子に手を伸ばすから、花凛を美奈子の胸に抱かせた。 「花凛、いい子にして……あれ、花凛おでこどうしたの? 赤くなってる……」 「さっき、イスで打っちゃったんだよな?」 「う〜?」 「えっ、大丈夫? 吐いたりしてない?」 美奈子が花凛の額を撫でながら、覗き込む。 「大泣きしてたけど、吐いたりはしてないよ」 「良かった…でも、とりあえず少しの間、様子見ておかないとね」 痛いの飛んでいけ!! 「あれ、琉夏くんも鼻赤くなってるよ」 「あぁ、これ……花凛と遊んでたら、ちょっとね」 END 〜あとがき〜 『花凛のお気に入りの遊びシリーズ@』 しばらく、続くかもです。 里夏
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