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Doll's Festival



「もうすぐ、ひな祭りだな? コウ」

携帯を見ていた琉夏がふと呟いた。

「そういやぁ、もう三月か。まぁ、ひな祭りなんてもんは俺たちには関係ねぇ行事だ」
「雛あられ買わないとな?」
「人の話聞いてねぇだろ?」

「……もしもし、美奈子? お雛パーティーしようよ」
「おい、なに勝手に…」

意見しようとする琥一を無視して琉夏は電話にはしゃいで話を纏めていく。





「うん、じゃあ3日にね♪ ……美奈子来るってさ」

「あいつも変なモンに乗り気になんじゃねぇっつーの。ハァ…で、パーティーっつっても何すりゃあいいんだ? パーティー出来るような金ねぇぞ」
「おひな様ごっことかしてみる?
俺がお内裏様で美奈子がおひな様…コウは一人で右大臣と左大臣な?」

「はぁ!? どうやって一人二役すんだ! それに…前にも言っただろうが、俺のが内裏顔だってよ」
「こんな恐怖のお内裏様見たことないよ」


―――――――


30分後…良い考えが浮かばない二人は完全にダレていた。

「どうすんべ…」
「どうしよっか…」
「元はと言えばテメーのせいだろうが…」


〜♪〜♪〜♪〜


琥一の話を遮るよう着信を告げたのは琉夏の携帯。

「あっ、美奈子からだ」
「ついでだから謝っとけ。言い出しっぺ」

「うん……もしもし?」
『もしもし、美奈子だけど』
「うん、わかってる。表示出てたから…あ、…ぁの、さ…」
『さっき言ってたひな祭りなんだけどね…』
「あ〜、うん…その事で…」
『お母さんに言ったら、二人を招待する形でうちでパーティーしないかって、言ってるんだけど…いいかな?』

「えっ…うそ、マジで?」
「おい、どうした?」
『うん…嫌?』
「ううん、俺たちは全然大丈夫だよ? な、コウ?」
「何がだよ?」
「お雛パーティー、美奈子の家でやらないかって?」「あぁ、構わねぇ」

「コウも良いって」
『じゃあ、ご馳走たくさん準備しておくね! 雛あられと甘酒も用意しておくから♪』
「本当? 超楽しみ♪」


「助かったな」
「うん、美奈子をガッカリさせずに済んだ。美奈子のお母さんナイスだ」


―――――――


〜おひな様当日〜

「たくさん作ったから遠慮しないで、たくさん食べてね!!」
「は〜い!!」
「あ、はい…」


リビングに飾られた豪華な雛壇を興味深そうに見つめる琉夏と琥一にそう言って美奈子のお母さんはキッチンに戻って行った。

「凄いご馳走…食べきれるかな?」
「ふふっ、余ったら持って帰っていいよ。お母さん、タッパーも用意してるから」
「お母さんナイス過ぎる!!」
「お前、母親似なんだな」


―――――――


「コウ、甘酒取って!!」
「おい、あられ零すな!」
「ふふっ、あっ!! ちょっとテレビ付けていい?」

リモコンを手に取り、電源を入れたら、ちょうど見たいチャンネルだったらしく美奈子はリモコンを置いた。

「あっ、これって天国と地獄の奴だよな?」
「そうそう! 負けた方がゲテモノ料理食べるの!!」

ちょうど、画面の中では敗者のタレントが何やら昆虫料理を食べる羽目になっていた。

露骨に嫌そうな顔をする敗者…。釣られて嫌そうな顔になる琥一。

「おい、美奈子…あれだ、テレビ消せ」
「えぇ〜、どうして? 面白いのに?」
「んな、気味悪ィ番組見ながら、飯食えるかよ…テレビ局も飯時になに放送してんだ」

「コウ、俺たちお客様なんだから文句言うなよ。それに今日は女の子の日なんだから、美奈子に逆らったらダメだ!!」
「琉夏くん…ひな祭りは、女の子に服従する日じゃないよ?」

「とにかくよぉ、気持ち悪いだろーが」
「あぁ、コウは虫が大の苦手だもんな。ゴメン、忘れてた。ハハハッ!!」
「テメーはワザとだろ…」
「そっか、コウちゃんは虫が苦手なんだ。じゃあ、切るけど、ちょっと待ってて。録画しておくから」
「録画してまで見るのか…悪趣味だな」
「えっ、切っちゃうの?美奈子、かわいそう〜」







「これで当分は食事に困らなくて済むな?」
「あぁ…きっと、最初から土産に持たせるつもりで大量に作ったんだろうな…」
「美奈子が俺らの食料事情をお母さんに話してたのかもな?」
「だな」
タッパーが大量に入った紙袋を両手に抱えてWest Beachへの帰路を歩く兄弟だった。





-END-


〜あとがき〜

『ひな祭り』とは名ばかりの訳のわからないで話ですみません…気付いたらこうなってた。

それにしても、人の話を聞かないバンビだな(笑)

里夏

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