夢から醒めて 「準備できた? ほら帰ろ♪」 美奈子の手を取って、教室を出たら、柔道着着た不二山と遭遇した。 「あれ、今日部活あったっけ?」 美奈子は慌てて繋いだ手を離してカバンの中のスケジュール帳を探す。 「いや、俺が個人的に練習するだけだから、おまえは帰っていいぞ。つーか慌て過ぎ。マネージャーなんだから冷静さは大事だぞ?」 「フフフ、そうだね。不二山くん、また明日ね」 俺はスケジュール帳をカバンに戻した美奈子の手を再び握る。 「あぁ、またな……琉夏、場所考えろ」 「何が?」 「何って……手」 「いいんだよ。俺らラブラブだもん。な?」 不二山に見せつけるようにギュッと手を握って、美奈子の顔を覗き込む。 「そうじゃない。少しは鹿野のこと考えてやれっつってんだ」 「……?」 「こいつ、おまえのファンの女子たちに嫌みとか言われてんだ」 「……不二山くん! 別に気にしてないから!! いいよ!」 「いいわけないだろ。琉夏、付き合うならちゃんと鹿野のこと護れ。こいつは俺にとっても大切な仲間なんだ。護れねぇなら交際させらんねぇ」 「………」 * * * 「……琉夏くん? …怒ってる?」 WestBeachへの帰り道、黙りこくってしまった俺は美奈子に呼ばれて、ようやく現実に戻された。 「…えっ!? …ゴメン。聞いてなかった…なに?」 「怒ってる?」 「……怒ってないよ?」 「…………」 美奈子がジッと俺の目を見るから、居たたまれなくなって、さっきから考えてた事を漏らす。 「……考え事してた。さっき、不二山が言ってたこと…あれ、本当?」 「………どうだったかな…」 「美奈子」 「……ちょっとなんだよ? カレンさんや不二山くんが助けてくれてるから、嫌な思いしたりとかはしてないし……」 そう言って、美奈子は視線を逸らした。 「……ゴメン。俺のせいだ。オマエが嫌な目に合う必要ないのに」 「琉夏くんのせいじゃないでしょ? 私は琉夏くんがいるから毎日楽しいんだよ?」 「……ホント?」 「ホント! だから行こ」 無意識に繋いだままの手を美奈子に引かれるままに歩き出した。 「そういえば、不二山……俺たちが付き合ってるって思ってるんだ?」 「うん、そうみたい……『デートなんて付き合ってなきゃしないだろ』って」 「相変わらず、お堅いな。まだ、付き合ってはないのにな? ……端からはラブラブカップルに見えてるんだ。このまま……」 「……ん、なに?」 美奈子が俺の顔を覗き込んできた。 「ううん! な〜んにも?」 「もう、変な琉夏くん」 「心外だ……俺はいつも変だよ?」 「フフフ。いつも、変なんだ」 美奈子のキレイな笑い声が耳に心地いい。 * * * ピピピピ…という電子音で目を覚ました。 「……んっ。あれ…美奈子?」 時計に目を向ければ朝の7時を指している。 さっきまで見ていたのは現実ではなく、夢が見せていた懐かしい学生時代の1ページだったのだと認識できた。 「ふぁ〜ぁ。……あったな。あんなこと…」 夢と現実を認識した途端に空腹を呼び覚ますように、漂ってきたのは美味しそうな匂い。 * * * パジャマのまま、キッチンへ向かう。 手狭なキッチンには温めるしか出来ない電子レンジと3合しかたけない炊飯器、小さめの冷蔵庫が置いてある。 「あ、おはよう。琉夏くん」 それから、エプロンを付けた美奈子がいた。 「うん、おはよう。お腹空いた」 「フフフ、もうすぐ出来るから顔洗ってきて?」 「はーい」 顔を洗ってきて、ついでに適当に服をひっつかんで着替えた。 夢から醒めて 戻ってきたらキチンと並べられた朝食。そして優しくて可愛い美奈子がいる……最高!! END 〜あとがき〜 突発的に書いたので、なんだかオチも纏まりもない話になってしまいました。 里夏
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