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白熱! むしとり大会!!




『2時より中央公園にて木曜日恒例の虫取り大会を開始いたします。参加希望者は1時45分までに、公園内の噴水前広場にて参加申し込みをして下さい』

そんなアナウンスが聞こえたのは、ジム戦で立ち寄ったシモンシティの中央公園でランチを食べている時のことだった。

「虫取り大会なんてやってるんだね」
「俺、出たい!」

私の隣でおにぎりを頬張っていたルカが思った通り、この話題に飛びついてきた。

「ニーナ、俺たちも出るぞ。反射神経を鍛えるいいチャンスだ!!」
「えっ!? 」

立ち上がったアラシが、舎弟化したニーナに有無を言わさず、共に参加表明した。

「僕はそういうのは苦手だから遠慮しておくよ」
「俺も出ない。なんでわざわざ虫なんて捕まえなくちゃならないんだ」


「なぁ、コウも出るだろ?」
「出ねぇよ。くだらねぇ」
「出ろよ」
「出ねぇ」
「出ろって」
「しつけぇんだよ、テメーは!」

取っ組み合いの喧嘩を始めそうな雰囲気になったので、慌てて二匹を引き離す。


時刻は1時半。
公園内の噴水前広場に行けば、すでに大勢の人が集まっていた。

「物好きがワラワラ集まりやがって…」
「私、エントリーしてくるから、みんな待っててね?」

不機嫌丸出しのコウと、その周りにいる5匹にそう伝えて、歩き出したら…何故か6匹ともついて来てしまった。

「俺も行く。…みんなも一緒に行くって」

ワラワラついて来た6匹と共に受付を済ませていたら、ルカが足つついてきた。

「どうしたの?」
「あれ……フーズが沢山ある。木の実もだ」

「あれは優勝賞品の木の実とフーズ一年分ですよ。頑張って優勝目指して下さいね」

ルカが物欲しそうに見つめていたら、受付のお姉さんが教えてくれた。


「おい、ルカ…気合い入れんべ」
「「えっ!?」」
「食費が浮くに越したことはねぇだろうが」

やる気を起こしたコウが苦々しい顔で、大食漢のアラシに視線を移す。

*
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*

「俺たち、オマエと旅に出る前は生活苦だったんだ」

突然、やる気に漲ったコウにポカンとしていたら私にルカが教えてくれたこと。

「結構キリキリでさ。今でも節約癖が抜けないみたいアイツ」

生活苦…だから、ルカはあれだけ私について来たがったのかな……?

*
*
*

「キャッ!!」

アラシとニーナが何やらうねうねしている物体を持ってきた。

「何って、餌に使うためのミミズ。怖いんか?」
「やっぱ、美奈子ちゃんも女の子だね。こういうの怖がるのとか超可愛いvvv」

意外…ニーナはこういうの苦手だと思ってたのに平気なんだ。


「…バカっ!! 来るなよ!」
「逃げることないじゃん。ほら、セイちゃんの毛みたいにうねうねしてて可愛いよ? うねうね仲間じゃん。ほらコウも」
「来るなバカルカ!!」

逃げるセイジとコウを面白がってルカが追い掛け回す。

*
*
*

仕方ないので、それをしばらく並んで見ていたら、キレたコウに殴られたルカがこっちに走ってきた。
多分、抱きついて来るんだと思う。

思わず、避けてみたい衝動に駆られたけど、可哀想だから受け止めてあげよう。


「あ〜あ、せっかく虫嫌いを克服するチャンスなのにな。コウの意気地なし」
引き離されたルカがコウに向けてアカンベーをしながら悪態を付くから、コウのボルテージが上がっていく。

「上等だ、ゴラァ!!」


*
*
*

大会開始早々に他の参加者たちはパートナーと共に走り出した。

釣られて走りそうになったけど、うちには走ることが得意ではない子が二匹(コンノとセイジ)いるので、いつも通りの速度を保って進む。


しばらく歩けば、あちこちで虫ゲットに奮戦するトレーナーを見かけるようになった。
この辺りにはたくさんいる……


「のあぁぁぁぁっ!?」


突然、上がった絶叫。
後ろを振り返れば、コウが普段では絶対にお目に掛かれないだろう顔をして、ルカを指差していた。

「あっ、ルカさんの頭!」
「女みてぇ」

ルカの頭に止まる大きなチョウはまるでリボン。

「ふふっ、本当だ♪ ルカ、可愛いよ?」
「マジ?」

「美奈子、鏡、鏡」と鏡を見たがって手を伸ばすルカにハンドミラーを貸して上げたら、ルカはリボンを付けた自分にはしゃぎだした。

「俺、カワイイじゃん!! ヤバい、目覚めちゃいそう」
「……ルカ、動くな」
「へっ? …うわっ」

ポン!!

アラシがルカの頭目掛けて、突然モンスターボールを投げつけた!

ボールに吸い込まれるチョウ。しばらく、ガタガタと揺れた後にボールは静かになった。


「ほら、一匹めゲットできたぞ」

自ら投げたボールを拾い上げたアラシは私に手渡してくれる。

「ありがとう」

今まで、この子たちの“妨害”にあって新しい仲間をゲットすることが出来なかったから、なんか新鮮。

「今、頭に少し当たった。ほら、コブんなってない?
あいつ…きっと、ワザとぶつけてきたんだ。なんか悪い笑顔浮かべてた気がする」

私の肩によじ登ってきたルカは自分の額をさすりながら、ブツブツとアラシへの文句を繰り返していた。

*
*
*

再び、コウの野太い悲鳴が響き渡った。おそらく虫が近付いて来たのだろう…。
コウが悲鳴を上げる度にアラシとニーナが絶妙な連携で次々ゲットしていく…先程から、そうやって結構な数を捕まえることができた。


タマオは、なぜ虫がコウばかりに近付いて来るのか…その原因を考えているようだが、その原因が思い付かずに悩んでいる。

私は知ってる…さっき、蜂蜜を舐めていたルカが舐め終わった手で、わざとコウの頭に触れたことを……。
コウはポリシーに触れられたことに重点を置いていたので、蜂蜜が付着したことに気づかなかったようだ。

あとで頭洗ってあげなくちゃ。



「あっ、コウ。また、ヨタとカドが現れたよ」

ヨタとカド…最初のチョウを除いて、先程からコウに近づいてくるのは大半が二種だった。
二種族とも、どこにでもいて、外見的に可愛らしさがなく、さらに性格は所構わず好戦的なので、あまり好まれない種族である。

それは私も同じなので、この大会が終われば野に放つと思う…そもそも、ルカたちが手分けして勝手に野に帰すのだろうけど…。

ちなみにアラシたちが用意してきた、うねうねミミズは虫には効果が見られなかった。どうやら、発案者ニーナは釣りと勘違いしたらしい。

*
*
*


「今大会の優勝者は……」

優勝者発表の時刻になった。6匹を見れば優勝を確信した顔をしている。

「……カンサイシティのマドカさんです!! それでは、次回の開催をお楽しみ下さい!」

参加者たちが散って行く。「おい…なんで俺たちは負けたんだ? あんなに捕まえただろうが…まさか出来レースか?」
「上には上がいるんスかね?」

「なに言ってるんだ、おまえら? この大会はたくさん捕まえたトレーナーじゃなくて、よりデカい奴を捕まえたトレーナーが優勝だろ!?」

「「「「「「えっ!?」」」」」」

セイジによれば、私たちがルカとコウのケンカを止めている間に、実行委員会から『一番大きいサイズを捕まえた者が優勝』だと初歩的な説明があったらしい…。


「コウのせいだ…」
「最初に手を出して来たのはテメーだろうが!!」

二匹は罪を擦り付けあいながら、再びケンカを始めてしまった……。




END


〜あとがき〜

3月の拍手お礼文でした。移動に伴い、名前変換を二つ付けてみました。

相変わらずグダグダですが、これがバンビ一行の日常だと言うことで…バトルになると、みんな出来る子たちなんです!!
日常がダメなだけなんです。←

拍手&お付き合い、ありがとうございました!!


里夏

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