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言の葉ひらり



日曜日の遅い朝…美奈子は放っておいたら昼まで寝続けそうな琉夏を起こしに寝室へ向かう。

いつも早起きな花凛は、遊び相手のパパがまだ夢の中にいるために、お気に入りのぬいぐるみを相手に遊んでいた。

「パパ起こしてくるね〜」

そう声を掛けたら、理解したのか花凛は美奈子の後をハイハイしながらついて行く。

*
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「琉夏くん、お昼まで寝るつもり? 花凛、遊び相手がいなくて寂しそうだよ」

美奈子が眠り続ける琉夏の肩を揺すりながら声を掛けても「ん〜?」と生返事が返ってきただけ。
寝室に入ってきた花凛はベッドに手を掛けて、つかまり立ちをしながら、そんな父親の顔を覗き込む。

「花凛。ママ、洗濯物干さないといけないから、代わりにパパ起こしてあげてね?」

美奈子はそう言って、花凛の頭を撫でると寝室を後にした。

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「あぅ〜、ねぇ〜」
「う〜ん、そ〜だ…ね……」

美奈子の代わりに花凛が声を掛ければ、まだ夢の住人で居続ける琉夏は寝ぼけながら花凛の頭を撫でて、夢の中に戻っていく。


「あ〜ぅ、あっ…パッ!!」

「パゥ…パーパ」


「……!?」

琉夏が飛び起きる。
キョロキョロと辺りを見回して、やがて花凛を目に止めると琉夏は花凛を抱え上げた。

「えっ…花凛が今『パパ』って言ったの?」
「パ〜パ」
「花凛!! オマエ、天使!」

父親にギューッと抱きしめられ、花凛は嬉しそうに手をばたつかせてはしゃぐ。
琉夏は花凛を抱きしめ、寝室を急いで抜け出した。

*
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「美奈子!!」

洗濯物を干す美奈子を見つけて琉夏は走り寄った。

「あ、琉夏くん。やっと起きたんだね。おはよう」
「あ…うん、おはよう。それより、花凛だよ!! 花凛が進化したんだ!」
「……えっ、しん…?」
「今、俺を『パパ』って呼んだんだよ。正式には『パ〜パ』だったけど」

花凛を美奈子の前にずいっと出したら、花凛は母親に手を伸ばして抱っこを強請りだした。
それを見て、琉夏は花凛を自分に引き寄せる。

「ほら、花凛。『パパ』って、もっかい言ってみ?」
「……」
「ほら、花凛?」
「………」
「………………」
「ふふ。花凛は気まぐれな所があるからね」

琉夏が花凛の頬を突っつきながら、喋るように促すも効果はなかった。
むしろ花凛は嫌そうに顔を背ける始末。

「琉夏くん。それより、早く朝ご飯食べてもらわないと……」
「えっ!? ……あぁ。うん、そうだな」

*
*
*

「さっき朝ご飯食べたばかりで、お昼ご飯食べれる?」
「もちろん。俺、オマエの料理ならいくらでも食えるよ?」

「はい、花凛。アーンして」
「ア〜ン」

涎掛けを掛けた花凛は美奈子特製離乳食を堪能している。それをジーッと見つめる琉夏。

「美奈子、俺にもアーンってして?」
「なに言ってるの……。はい花凛。最後の一口ね」

食事を終えた花凛の口を美奈子が拭っていた。その時…

「マ〜マ」

「「!?」」

「琉夏くん……今、花凛が…聞いた?」
「…聞いた。『マ〜マ』って言った」

「花凛、もう一回、『ママ』って呼んで? ね?」
「ア〜ン」
「ア〜ンじゃなくて…『マ〜マ』でしょ?」
「………」


美奈子が琉夏同様に花凛に懇願するも、儚くも先程と同じ結果になった。

「美奈子…花凛は、ほら気まぐれな所でがあるから…ね」
「……うん、そうだね」


*
*
*


「コ〜、コ〜」

「花凛、次は『コウ、コウ』言ってる…コウの奴、ズルい」
「花凛、コウちゃん大好きだから」
「でもさ、コウより俺の方が好きに決まってるよ!! ね、花凛?」
「コ〜、コ〜!!」

「「………」」








END


〜あとがき〜

このシリーズ、何かと兄貴が優遇されてますね。


里夏

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