*Main* | ナノ




三匹の問題児


「いいですか? おまえたちは今日からお母さんの元を離れて、自活するのですよ」


美奈子ママは三匹にそう言って、可愛い子供たちに親離れをさせたのです。

*
*
*

子供たちは、それぞれ自分たちが住むための家を作り始めました。


一番目の子・ルカは藁で家を建てることにしました。

「あ〜あ、コウのケチ! 俺も一緒に住まわせてくれればいいのに!! 家建てるなんてメンドクサイ…これでいいや」

* * *

二番目の子・コウは木の枝で家を建てることにしました。

「メンドクセーなぁ。ん、木の枝か…これでいいべぇ」


* * *

三番目の子・セイジはレンガの家を建てさせました。

「あぁ、なるべく頑丈なやつを頼む。金はあるから、なるべく早く造ってくれ」


*
*
*

ある日のこと、いつも悪ふざけをして遊ぶルカの元を、ついに指導員のオオサコが訪ねて来ました。

「コラァ、ルカ! 大人しく出て来〜い!!」
「ベー」

藁でしか出来てない扉を器用にドンドンと、ノックしながら呼び掛けるオオサコを悪い子のルカは無視します。

「よーし、それならこっちも本気で行くぞぉ!! あと10秒だけ待つ! 出て来なかったら、家を吹き飛ばすからなぁ!!」

オオサコのカウントダウンが始まりました。

「10、9、8、7、6…」

無視を続けるルカは呑気にホットケーキを食べ続けます。

「…3、2、い〜ち…

………

…0!! フーッ、フーッ!!」

バサーッ!!

「ウソ…」

途端に凄い風が吹き、藁の屋根が飛んでいってしまいました。
続いて四方の藁の壁が吹き飛ばされ、残った扉もなくなります。
もう、ルカとオオサコの間を隔てる物はありません。

「観念しろ、ルカ!!」
「……Bダーッシュ!!」
「コラァ! 待て〜!!」

猛ダッシュで逃げ出したルカをオオサコが追い掛けます。
ルカはコウの家を目指して走りました。

*
*
*

「コウ! 助けて!!」
「……ん? どうし…うぉ!?」
ルカの悲鳴に気付いたコウが木の枝で出来た扉を開けた瞬間、ルカが家に飛び込んで来ました。

「オオサコちゃんが来た!!」
「なにっ!?」

ルカと一緒に悪ふざけを繰り返すコウは「オオサコ」と聞いて、急いで扉を閉めました。しかし、扉を閉めてしばらく…

「コラァ!!」

とオオサコの大きな声が扉の前から聞こえました。
無視をしていると先程同様にカウントダウンが始まります。

「俺の家、オオサコちゃんの息で吹き飛ばされたんだ」
「藁なんかで造るからそうなんだよ」


しかし、そう言ったコウの木の枝で出来た家もすぐに吹き飛ばされてしまったのです。

追われる二匹はセイジの家を目指すことにしました。

*
*
*


セイジのレンガ造りの家に辿り着いた二匹は堅牢なドアを開けようとしますが、困ったことにビクともしません。
二匹はドア越しにセイジを呼びます。

「セイちゃん、開けて!!」
「嫌だ」
「開けねぇと、どうなるかくらいわかるよなぁ? セイちゃんよぉ?」
「脅されて開ける馬鹿がいると思うか? 絶対開けない」
「…やるか、コウ」
「あぁ、蹴破るぞ」

バタンっ!!

「入れればいいんだろ!? あー、もう!!!」


* * *


脅しに屈したセイジに招き(?)入れてもらったルカとコウは、その豪奢な内装に驚きました。

柔らかな絨毯に革製のソファー、壁にはアルパカの頭部の剥製が飾られ、暖かな暖炉まで完備されていたのです。

「セイちゃんち、凄いね」
「悪趣味だな…」


* * *


外から何か聞こえてきたのはセイジがルカに強請られてお茶を出したときのことでした。

「オオサコちゃんかな?」
「…にしちゃあ声が小さくねぇか?」
「うちは防音もバッチリだからな」
「おい、セイちゃん。大きな鍋あるか?」
「あるけど、何するんだ?」
「暖炉で熱湯沸かすんだよ。オオサコちゃんが煙突から入って来るかもしんねぇからな」
「コウ、冴えてるな」外では今もオオサコが粘っていました。

「コラァ!! 観念しろー!」

しかし、痺れを切らせたオオサコが息を吹きかけても、レンガの家はビクともしません。

* * *

「オオサコちゃん帰ったのかな?」

煮え立つ湯を囲みながら、ルカは呟きました。
先程から、外が静寂を取り戻していたのです。

「じゃあ、お前等も帰れよ」
「僕の帰る場所は、もうない……俺たち、オオサコちゃんに家吹き飛ばされちゃったから、帰るとこないの。だから、ここにいることに決めたんだ。な、コウ?」
「世話になるわ」
「はぁ!?」

<<コンコン>>

セイジが身勝手な二匹に文句を言おうと立ち上がったその時、ドアをノックする音が室内に響きました。
途端にルカとコウが固まります。

「ママだよ、開けて〜」

ルカは大好きな美奈子ママの声に喜び勇んで扉を開けました。
しかし、扉の前にはいたのは久しぶりに会った美奈子ママだけではありませんでした。オオサコもいたのです。

「やっと出てきたなぁ!! もう逃げられないぞ!」

まったく、応じない兄弟に困り果てたオオサコは美奈子ママに協力をお願いしたのです。

*
*
*

ルカとコウ、そして二匹を匿った罪でセイジも叱られました。

三匹の後ろでは用をなさなかった大鍋がいまだにグツグツと煮え続けています。それは、まるでオオサコのボルテージのようです。
暖炉の薪が燃え尽き湯が冷めたころ、偶然にもオオサコの説教も終わりました。


悪ふざけが過ぎるルカとコウ、そして金銭感覚がおかしいセイジ…三匹は結局、美奈子ママの元に戻ることになり、再び仲良く、賑やかに暮らすのでした。


匹の


*お わ り*

[ TOP ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -