smile×smile 「いらっしゃい!」 「おう、これ土産だ」 smile×smile 俺と美奈子が一緒に暮らすようになってから、ちょくちょく様子を見に来ていたコウは、花凛が産まれてから更に頻繁に家に来るようになった。 「おまえがまた馬鹿やってねぇか監視に来てんだよ」なんて言ってるけど、あれは口実…本当は花凛が可愛くて仕方ないんだ。 事実、花凛を相手してる時のコウはニヤケまくりで気持ち悪い。 「コウ、また来たの?」 「監視だ。監・視」 俺が花凛を抱っこしながら玄関に顔を出すや否や、花凛はコウに取り上げられた。人攫いだ!! 「花凛、いい子にしてたか?」 「あぁう〜、う〜」 「ふっ…そうかそうか」 最初はコウの顔を見る度に大泣きしていた花凛も今ではすっかりコウに懐いてて少し悔しい。俺、パパなのに。 「ふふっ、琉夏くん、花凛取られちゃったね?」 「あいつ人攫いだよ」 * * * 美奈子は俺とコウにお茶を出すと家事を片付けるためにキッチンに行ってしまった。 俺とコウはリビングで花凛と一緒に遊ぶ係。 とりあえず、花凛を人攫いのコウから取り返したいんだけど人攫いは花凛を離さない。 美奈子からは「時々なんだから、コウちゃんが来た時は花凛貸してあげればいいじゃない」って言われてるけど…。 「コウ、花凛返して? 花凛はパパに抱っこされたいって! ね? 花凛」 「こいつはパパより伯父さんに抱っこして欲しいってよ。な? 花凛」 「ぅ〜あ」 花凛を挟む形で静かに火花を散らせる。 「…ック、ヒック…グッ」 しかし、無言の攻防開始間もなく花凛がグズりだした。 今にも泣きそうな花凛にコウが慌てる。 「あっ! コウの顔が怖いから、うちの可愛い花凛が泣いちゃったじゃん!!」 「人のせいにしてんじゃねーよ。テメーも怖い顔してただろうが!! ほら、花凛泣くな、いい子だからな!」 花凛を抱っこしたまま揺り篭みたいにコウが動くけど、花凛は変わらずご機嫌ななめ。 コウは知らないんだ、最近の花凛のお気に入りの遊び…本当は教えたくない気もするけど、背に腹は変えられない。 「コウ、いいこと教えてあげる。花凛は『いないいないばぁ』が好きなんだ」 「はぁ!?」 「それやれば泣き止むよ?」 「…そうか…よし。花凛…いないいな〜い…ばぁ!!」 「!!??」 「っ……キャハ、キャッ」 「お、楽しいか?」 声を上げて喜んだ花凛にコウの顔は緩む。 「(笑っちゃダメだ…でもコウのいないいないばぁ、おかしすぎる!!)…ッ…コウ、俺ちょっと美奈子のとこ行くから花凛の相手頼んだ」 「おう、任せろ!」 * * * 「美奈子!!」 「どうしたの? そんなに慌てて…」 「ちょっと来て! 面白いもん見れるから!!」 キョトンと小首を傾げる美奈子の手を取って強引に連れ出した。目指すは必死に“いないいないばぁ”をするコウの元!! 見つからないように口元で人差し指を立てて、美奈子にも静かにするように促す。 コクリと首を縦に振った美奈子と共にそっと部屋を覗けば…やってるやってる。いないいないばぁで花凛をあやすコウが!! 恐持ての顔で面白い顔を作るから余計に面白いことになってる。こんな顔、普段のコウなら絶対しない! 美奈子を見れば美奈子も必死に笑いを堪えていた。 「コウちゃん、あんな顔出来るんだ」 「ちょっと写メ撮っとこうか?」 「怒られるよ?」 「平気平気♪」 …………? 携帯のカメラを起動させて「いざ撮影!」と再び部屋に目を向ければ壁が…違う目の前に怖い顔で薄ら笑い浮かべてるコウがいた。 「携帯構えて何やってんだ…テメーは?」 「変顔で赤ん坊あやすコウを想い出の1ページに刻もうかなって?」 地黒な顔を赤く染めながら、青筋浮かべたコウが抱っこしてた花凛を美奈子に渡した。次の瞬間… 「コウ離せよ!!」 コウに首根っこ掴まれた!! 「美奈子! コウを止めて!!」 「だからテメーが馬鹿やってねーか監視に来てるっつっただろうが! 馬鹿な真似しやがって!!」 あ〜、美奈子と花凛が遠ざかる。 「…あらら、パパ連れてかれちゃったね。花凛、コウちゃんに遊んで貰って楽しかった?」 「あいっ!!」 「よかったね〜」 * * * あの後、俺はコウに蹴りを入れられた。手加減してくれたんだろうけど、蹴られたケツはまだ痛い…。 痣になったらどうしよう? いい年して蒙古斑みたいになったらカッコ悪すぎる。 そういえば…コウの奴、花凛の前では冗談でも殴ったり蹴ったりしないんだよな。 暴力は使わないって決めてるみたい…相変わらず余計な気を遣うのが好きなお兄ちゃんだ。 「じゃあよ。また来るわ」 「来なくていいよ」 「黙れルカ。俺は美奈子と花凛に言ったんだよ」 「もう、二人とも喧嘩しないの!! ほら、花凛。コウちゃんにバイバイしようね」 美奈子が花凛の小さな手を持って手を振らせる。 「おう、じゃあな花凛〜」 コウもポーカーフェイスにデレデレを滲ませながら花凛に手を振り返していた。いつものコウじゃない…。 「俺もする♪ バイバイ、お兄ちゃん。バブー」 「気持ち悪ぃんだよ」 赤ちゃん言葉を遣いながら手を振ったら、白い目を向けられた。 〜あとがき〜 赤ちゃんは男女どちらでも大丈夫な設定にしたつもりなんですけど、若干女の子寄りになってますね(苦笑) 男の子派な方、すみません(^_^;) 親バカな琉夏と弟家族に絡む兄貴を想像するのが楽しい今日この頃。 琉夏の親バカより、むしろ兄貴の伯父バカのが圧倒的に目立ってしまった!! 里夏
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