迷子と技マシン 今、私たちがいるのはトキメキ地方最大の都市『リンカイシティ』。 海沿いに面した、この大きな街の港には他の地方に行くための大型船も行き来してた。リンカイシティの目玉は…様々な商品を取り扱うデパートやショッピングモール、港に隣接された遊園地や水族館、煉瓦道…などなど。 この街に到着して三日目、あまりに魅力的な街に興奮した私と6匹は旅を忘れて、しばらく観光を決めたのだ。 今日はポケメン6匹と煉瓦道に遊びに来た。話題のデートスポットと言うだけあり、カップルが多い…私、浮いてない? ふと見れば、トレーニングをするしないで揉めるアラシとニーナ…アラシいわく、この煉瓦道は走り込みに最適らしい。 コンノは本を片手に状態異常を治すための木の実を集めていた。セイジもブツブツ言いながら手伝っている。 「これか?」 「う〜ん、それは似てるけど、なんの効果もないやつだな」 「ややこしいんだよ。木の実のくせに」 いつもの様にイライラし始めたセイジの後頭部を見れば葉っぱが付いていた。 そんな、2匹を見ていたら突然手を引かれた。視線で追えば困った様な怒った様な顔で私の手を引っ張っているコウ。 「どうしたの?」 「ルカのバカが消えやがった」 揉めて、取っ組み合い(恐らくアラシが仕掛けたニーナ用秘密トレーニング)をしていた2匹と木の実を厳選していた2匹を呼び寄せて、いなくなったルカを捜す。 コウによれば、ルカはさっきまで飴を舐めながら蟻の行列を見ていたのにふと目を離した隙に消えていたそうだ。 「ルカくんは“テレポート”を覚えられないから、まだ近くにいると思うよ…ニーナくんは木の上を探してくれないかな? ルカくんは高い場所が好きみたいだから」 コンノのテキパキとした指示に従い、みんながルカ捜索に乗り出した。 私はベンチに座り、ルカを待つ係。 * * * 〜20分後〜 早々に「疲れた」と戻ってきたセイジと一緒にベンチで待っていると、徐々にみんなが戻ってきた。ルカの姿はない…。 「どこ、行きやがったんだ、あのバカルカ」 「まさか、誘拐されたんじゃあ……」 「ルカなら、むしろ誘拐犯を返り討ちにするだろうよ…」 「あっ、みんな見っけ♪」 行方不明だったルカがいつもの笑顔で駆け寄ってきた。 「「「「「「ルカ(くん、さん)!!」」」」」」 「この、バカルカ!!」 「イテッ!!」 コウに殴られたルカが弾みに何かを落とした。 「ルカさん、なんスか…コレ?」 ニーナがルカの落とし物を拾って片目を閉じながら中を伺っていた。 「技マッシーン!! さっき知らないお姉さんたちに飴ちゃん5つと交換して貰ったんだ」 皆の心配をよそにルカは行方不明の間に交渉していたらしい。 「ルカくん、これ……」 ニーナから技マシンを受け取っていたコンノが口を開いた。 「僕たちは誰も覚えられないよ技だよ…」 「えっ…マジ!?」 一瞬のフリーズの後にガックリと肩を落とすルカ。 コンノから回された技マシンを確認すれば…なるほど。ルカはかわいそうだけど、これは無用の長物でしかない。 貴重な飴を失ったと嘆くルカがしゃがんでる状態の私の背中に張り付いてきた。 しかし、直後コウに引っぺがされるルカ。珍しく無抵抗なところを見ると、余程ショックだったのだろう。 …そういえば、彼等のおかげでバトルも無敵状態、ジム戦も何度か経験して結構お金が貯まってる。 そして、ここには沢山の技マシンを売っているデパートがある。 「よし、デパート行こ!! 欲しい技マシン買ってあげる!」 6匹の目が途端に輝いた。 * * * リンカイシティの中心部…6匹は目の前のデパートの大きさに圧倒されていた。 「スゲーな…」 「マジパネェし…」 「フン、お前等はしゃぎ過ぎなんだよ。みっともないから落ち着け」 「はしゃいでも別にみっともなくはないと思うよ。本当に大きいなぁ…」 「コウ…この中でかくれんぼしたら面白そうだと思わない?」 「思わねぇよ」 デパート内でボールに入ろうともしない6匹が横一列になって移動すれば、どうしても他のお客さんの迷惑になっちゃうから、6匹を一列なり二列に並ばせて私たちは技マシン売り場に向かった。 途中、色々なものに興味を惹かれてフラフラして列を抜けるルカとニーナは、それぞれコウとアラシに手なり首ねっこなりを掴まれる羽目になっていた。 「コウ…俺、もう勝手にどこか行ったりしないから手離して」 「前科持ちが言っても信用できねぇな」 「痛い! 痛い!! アラシさん、引きずんのストーップ! 尻尾がマジで禿げるし!!」「じゃあ、振り払ってみろ」 技マシン売り場に付くとニーナが仕切に尻尾の毛並みを気にして直していた。アララ…ニーナ涙目…。 技マシンって本当にたくさんある…棚に並んだ沢山の技マシンが面白くて、夢中になって見ていたら足元にはコンノしかいなくなっていた。 目を見開いて慌てそうになる私に気付いたコンノが教えてくれた。 「みんな、欲しい技マシンを探しに行っちゃったよ。また問題を起こさなきゃいいんだけど…」コンノ用の技マシンを本人と一緒に探しながら、みんなを待っていたら5匹は揃って戻ってきた。 各々、技マシンを抱えてる…ルカが腕いっぱいに何個も抱えてるから一個に諦めて貰わないと…。 そう思っていたら、5匹はすぐに博識なコンノに希望の技を覚えられるかどうか聞こうと駆け寄ってきた。 そんな5匹を前にしてコンノはいつも持ち歩いている本を開く…。 ◆ 「う〜ん、これはタイプ自体が違うから無理だね。キミは格闘タイプだから飛行タイプの技は覚えられないんだよ」 「そうなんか?」 ◆ 「えっ…今、無理矢理覚えなくてもレベルが上がれば自然に覚えるのに!?」 「…!? 別にいいだろう!! 俺は今覚えたいんだ!」 ことごとく、無理の烙印を押されてく面々。 セイジの例を除いて、大抵が自分では覚えられない技を希望しては却下されていた。 そして… 「ルカくん…残念だけど全部無理だね」 コンノに苦笑いで無理宣告されて、再び絶望に包まれるルカ。 その目からは光が消えてしまい少し怖い…。ほかの4匹も暗い顔をしていたりイライラしているようだ。大丈夫かな…この子たち…。 * * * 希望の技を覚えられずテンションが下がったまま、デパート屋上でジュースを飲んでいた5匹…いつもは遊具に大はしゃぎするルカが目もくれずに下を向いたままジュースをズルズル飲んでいる。 やけジュースをしているのだろう。 ルカのあまりの落ち込み方に、私が困り果てているところでアラシが立ち上がった。 「俺、思ったんだけど…自分で技を作ればいいと思うんだ! 自分の限界は自分で決めたら終わりだろ!!」 …はいっ!? そう、声高らかに宣言したアラシに「アラシさん、マジパネェ!!」と、もはや舎弟と化してるニーナが絶賛した。 「コウ…俺も頑張れば、さっき無理って言われたやつでも覚えれるかな?」 「おう、やってみろ。俺は…そうだなぁ。いっそ誰にも覚えられねぇ俺だけの必殺技ってやつでも考えるか」 「あっ、俺も! 俺専用の必殺技を作る!!」 よかったルカの目が輝いてる。 * * * 〜数分後〜 「セイちゃん覚悟! トウッ! ルカキーック!!」 「うわっ! なにするんだ!?」 先程の落ち込みは何処へやら…張り切ったルカが必殺技(?)をセイジに喰らわせていた。 「ルカキック」 を聞いてるんじゃない!! しかも、なんだよ、そのセンスのカケラもないネーミングは?」 「えっ…センス悪くないよ。わかりやすくて、いい名前だよ? ねぇ、セイちゃんはどんな必殺技作ったの?」 「教えない。俺は技の名前を叫んだりしないし、何よりお前たちに俺のセンスがわかるとは思えないからな」 * * * 「アラシさん! 空を飛ぶのだけは無理ですって!!」 「わかんないだろ? お前もやってみろ!! まずはそこの椅子から羽ばたけ」 「ちょ、みんなアラシさんを止めて!!」 * * * 本日、コンノのみ技マシンでリフレクターを覚えた。 「僕は攻撃には自信がないから、いっそ防御面を伸ばした方がいいとおもってね」 END 〜あとがき〜 グダグダですね…はい、すみません。 みんながどんどん幼児化してしまうのは、一体どう設楽?? ちなみに実際にすべての技マシンが揃った店は本家ゲーム内では存在しないよ!! …あればいいのにね。 それと誰がどの技マシンを希望してたかの設定はハッキリ決めてないのですがアラシだけ決めてます。やつは『わざマシン58「フリーフォール」』を覚えようとして却下されました。 本家はBWから技マシンが使い捨てじゃなくなったのが大変ありがたいです。 里夏
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