@兄弟 〜凍土with兄弟〜 極寒の滑走者 ここは集会所…今から幼なじみの兄弟、琉夏と琥一と一緒に狩りに行ってきます。 二人は腕が立つから心強いんだ。 それにしても、遅いなぁ…。 ――――――― 「遅れちゃったね…美奈子もう来てるかな?」 「たぶんな。つーか…てめぇが、ちんたら防具を選んでたからだろうが」 集会所に行くと美奈子はすぐに見つかった…が、何やらガラの悪い男たちに絡まれていた。 「トウッ!!」 ドカっ!! 「イッテ!?」 「ナニしやがんだゴラァ!!」 双剣を背負った琉夏が美奈子を取り囲む男の一人に飛び蹴りを喰らわしていた。 「琉夏くん!」 驚いたような、それでいて安心したような声を上げた美奈子を自分の後ろに隠す。 「俺らの連れになんか用でもあったか?」 身体の大きい琥一が大剣片手に睨みを利かせれば、…男たちは「ヒィ」、「おい、あの二人って……」、「ヤベーぞ」とか何とかいいなが逃げて行った。 連中がいなくなった途端、先程の鬼の様な形相は何処へやら…見知った幼なじみたちが心配そうに美奈子の顔を覗き込む。 「遅れてごめんね? ヒーローが来たからもう安心だよ」 「あいつら…今度見つけたら絞めとくか?」 「ありがとう。でも暴力はダメだよ?」 「ダメだよ? コウ」 「テメーだろーが!」 ――――――― 「美奈子、今日はどのクエスト受けるか決めてるの?」 受付に向かう途中に琉夏からの質問。 「今日は…凍土で鉱石集めしながらウルクスス狩り!」 「凍土? マジで?」 寒がりな琉夏は美奈子の予定を聞き、嫌そうに顔をしかめる。 「じゃあ、お前はおとなしく待ってろ。 “俺が美奈子と二人だけ”で行ってきてやる」 「…行く。コウにだけいい格好させない」 わざと琥一が挑発的な物言いをすれば琉夏はまんまと引っ掛かった。 「じゃあ、受付済ましてくるから二人は準備しておいてね!」 しばし、美奈子と別れた二人はクエストに向かう準備を済ませる。――――――― 「おまたせ!! 準備は出来た?」 二人が頷けば「じゃあ行こうか」と美奈子は張り切って出発地点に歩き出した。 張り切り過ぎたのか、段差に躓いている。 「可愛いなぁ…///」 「危なっかしいなぁ…ったく」 凍土のキャンプ場で用意されている分のアイテムを各々で分けている時に美奈子は気付いた。 琥一の持ち物は持てる限りの…肉と肉焼きセット。 「コウちゃん…回復薬は? 薬草は?」 「んなモン、いらねぇだろ?」 「コウ…こんがり肉は旨いけど体力は回復しないよ?」 琉夏も琥一の荷物を覗き込んでいた。 「でも、体力なくなったらどうするの?」 「馬鹿かテメーら…あぁ、いいか? 体力なんてのは攻撃喰らわなきゃ減らねぇんだよ。つまり、腕次第でなんとでもなるっつー訳だ。 でもな、スタミナはダメだ。なんもしなくても減っちまう。だからだ…肉喰ってりゃ間違いねぇ」 「なるほど、冴えてるな」 「テメーも鬼人化ばっかすんだから、スタミナ切れには気ぃつけろよ?」 ――――――― キャンプ場から、凍土エリア1に進入してすぐ… 「あっ!!」 ホットドリンクを飲んでいるにも関わらず寒がっていた琉夏が突然走り出した。 後を追えば…嬉々として蜂の巣の下にしゃがみ込みながら、ハチミツを採取している彼の姿があった。 「ほら、ハチミツ! 持って帰ってホットケーキに塗らなくちゃ♪」 「ホットケーキじゃなくて、回復薬と混ぜて回復薬グレートを作れよ!」 人の事を言えない立場の琥一に引っ張られて琉夏が美奈子の元へ戻ってきたので3人は先に進む。凍土エリア6… 「美奈子、ほらオーロラ草みつけたよ」 「ホントだ〜。あっ、 琉夏くん! こっち来て!! 灰水晶の原石が出てきた!!」 「しめたな。よしキャンプ場に持って帰って納品だ」 琥一がストックの肉を焼いている間に琉夏と美奈子がエリア内を採取していた。 色々と手に入った納品アイテムの中でも 美奈子が採掘した“灰水晶の原石”は納品すれば一つで、なかなか良いポイントになる。 「じゃあ、俺が運ぶから美奈子は俺のボディーガードになって。敵に攻撃されないように。OK?」 「了解!!」 原石はモンスターから攻撃を受けた弾みで落しすだけで、割れてしまうため細心の注意が必要だ。 肉を焼いてる琥一に「コウー!! 美奈子が灰水晶の原石を掘り当てたから、一緒に納品してくる!! いい子で待ってろよ!!」と声を掛ければ「おぅ」と気のない返事が返ってきた。 肉焼きに夢中で琉夏の冷やかしも気にならないようだ。 「じゃ、行こっか?」 ―――――――― 「遅ぇなー、あいつら…ん?」 ドシンドシンと聞こえる足音…「ウルクススが近くにいんのか?」と琥一が大剣を手に身構えたと同時にウルクススが姿を現した。 そして、琥一の姿を見つけるや否やの突進滑り。 突進滑りを避けた琥一が斬りかかろうとした瞬間、ウルクススはヒップアタックを繰り出した。 「危ねぇっ!!」 琥一が辛うじてウルクススの素早いヒップアタックを避ければ、聞こえてきたのは狩場に不釣合いな「ガシャン!!」と言う破壊音。 見れば、先ほどまで琥一が肉を焼いていた肉焼きセットがウルクススの尻に潰されていた。 ウルクススが退いた後には…もはや、原型を留めていない肉焼きセット。 「……せっかく…せっかく焼いた肉を…テメェ…!!」 ――――――――― その頃…… 琉夏と美奈子は無事にキャンプ場に辿り着き、納品を済ませることに成功していた。 「琉夏くん、ご苦労様! 重かったでしょ? 腕、痺れてるんじゃない?」 「平気。ほら、俺は不死身のヒーローだからね。それより、早く戻らないと寂しがり屋なコウが泣いちゃう」 そう冗談を言いながら琉夏が差し出した左手に美奈子が手を重ねた瞬間だった…… 『クエストクリア!!』 「「えっ!?」」 ――――――― 「はぁ、はぁ…ったく、よくも俺の高級肉焼きセットを…思い知ったか!! クソ牙獣が!!」 END 〜あとがき〜 ※実際に肉焼きセットが壊れることはありません!! 琥一ファンの皆さんごめんなさいm(_ _)m 何この兄貴…ただの肉好きな人…私は兄貴をピエロにでもしたいのか!? 言っておくけど…兄貴大好きですよ! うん本当に!! いいお兄ちゃんだね。でも弄り易いし、何よりうちは琉夏贔屓だから許してね(苦笑)
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