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兄弟

琉夏琥一一緒ver〜


「ただいま〜…寒い、寒くて死ぬ…」
「遅かったな。で、買ってきたか?」


WestBeachの扉が開き、寒空の下、買い出しを終えた琉夏が帰宅した。


「はい、これ」
「……なんだ、これ?」


琉夏によりダイニングテーブルに置かれた買物袋を覗いた琥一は訝しげな声を上げた。

「リクエスト通りの豆まき用の豆と恵方巻」
「豆はわかる。リクエスト通りだ…間違いねぇ。でもよぉ、なんでロールケーキが3本も入ってんだ?
俺は恵方巻買ってこいっつったよな?」

「だから、そのロールケーキが恵方巻なんだって」
「はぁっ!?」

「パン売り場行ったら、ロールケーキで恵方巻って書いてあったから買ってきた!」
「普通は巻き寿司だろ!?」
「寿司は売り切れてたんだ」
「だからって…おまえ…」


甘いものが苦手な琥一がため息をつく中、琉夏は袋の中を探り、何かを取り出す。


「そう言うと思って…じゃ〜ん! コウにはビターなコーヒー味を買ってきたからな!!」
「…確かに、コーヒーは好きだけどよぉ」

そんな戸惑いを見せる琥一を他所に琉夏は更に袋を探る。

「美奈子には苺味買ってきた。ほらパッケージのウサギにリボンついてるんだ」


「一緒に恵方巻を食べて豆まきをしよう」と約束した美奈子はまもなく来るだろう。


「あっ、コウ。これ渡しとくから豆まきのときは頼んだ」

渡されたのは紙で出来た赤鬼のお面。

また今年も琥一が鬼の役になり、悪乗りした琉夏とはしゃぐ美奈子から豆を投げられることが決定済みなようだ。

「また俺かよ?」
「あっ、コウはお面なくても大丈夫か」
「あぁ!?」


昨年も琥一が鬼役だった。
琉夏と美奈子は楽しそうに笑いながら鬼を退治していた。


(まぁ、鬼役も悪かねぇか…)



―――――――



「「鬼は〜外!! 福は〜内!!」」

「イテっ! 琉夏、てめぇ、少しは手加減しやがれ!!」
「鬼がキレた!! 怖ぇ〜!」


美奈子の手を引いて琉夏が逃げようとした瞬間、美奈子がこけた。


「「あっ、美奈子!!」」

「痛たた…」

「コウが怖い顔して襲い掛かってきたから美奈子は転んだんだ!! コウのせいだ!!」
「テメーが急に美奈子の手引っ張ったからだろうが!! 美奈子、大丈夫か?」


しゃがみ込んで美奈子を気遣う琥一。
そんな琥一に琉夏は豆を投げつける。


「むっつりスケベ鬼め…本性を現したな! 美奈子から離れろ!! 鬼はー外!! 悪霊退散!!」
「イテッ!! いい加減にしろよ、コラ!?」


ギャーギャー騒ぎ出す兄弟。


「もう! いい加減にしなさい!!」


WestBeachに美奈子の怒声が響き渡った。



―――――――



「美奈子の怒鳴り声で鬼も逃げ出したと思うよ」
「だから、テメーのせいだろ」



END

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