present for you いったい、どうすればいいんだ? 設楽聖司は目の前の包みを睨みながら頭を抱えて時折、唸り声まで上げていた。 淡い紫色の包装紙…中身は女性もののワンピース。先日、ショッピングモールで見つけたものだ。 密かに好意を寄せる美奈子に似合いそうだ…そう思い、気がついたら購入していた。 しかし、買ったはいいが…美奈子の誕生日でもなければ、何かのお返しでもない、この時期にいったいどうやって衣服をプレゼントすればいいって言うんだ!? 「あぁ〜……うー、あぁぁぁ!!」 「どうかなさいましたか?」 「うわぁぁぁぁ!! なんだよ急に!? ノックもしないで入ってくる奴があるか!?」 「すみません。ノックをしたのですがお返事がなく、呻き声が聞こえましたので…倒れていらっしゃるのではないかと…」 「……あ……あぁ、なんでもない」 「…ところで坊ちゃま、その包みは?」 突然、執事が現れたことで忘れていた。 「これは、その…あれだ。……誰か客が飲み物を服に零すかもしれないからな。…そのための着替えだ」 我ながら、いいアイデアだ。 この方法なら自然に美奈子に服を贈ることができる!! 「はぁ、左様でございますか…では美奈子様がいらっしゃる時まで大切に保管しておきましょう」 「!? …だ、誰も美奈子のためだなんて言ってないだろう!!」 ニヤニヤしながら執事は部屋を出て行ってしまった。 なんでバレてるんだよ!? * * * 「キャッ!」 「すまない!」 作戦は完璧だ。 そして、それを今…遂行している。 まず、美奈子が火傷しないようにアイスティーを用意させた。 感づいてしまった執事も仕掛人だ。俺の合図で動く予定になっている。 アイスティーを手に昨晩練習した自然な零し方を実行…見事に美奈子の服に若干だが零すことに成功した!! 「紅茶は染みになりやすい。すぐに洗濯した方がいいだろう…ちょっと待て」 テーブルに準備しておいたベルを鳴らす。 瞬時に執事がドアをノックした。 (馬鹿っ! 早過ぎるだろ!?) そうは思ったが、とりあえず、執事に美奈子を連れて行かせた。 後は執事が預かったワンピースを美奈子に手渡せば…完璧だ。 * * * 「本当にいいんですか? この服貰っちゃっても…」 「なんだよ? 嫌なのか?」 「いえ、凄く高そうだから…」 「別に構わない。俺のせいで汚してしまった訳だしな…」 「でも凄いですね。私にピッタリでした!! 似合いますか?」 「えっ……あぁ、まぁ…うん。いいんじゃないか? 馬子にも衣装だな」 (似合うかだって? 当たり前だろ、お前に似合うと思ったから買ってきたんだ!!) 「執事さんが教えてくれました。 設楽家はこういう事態に備えて沢山の服を用意しているって!」 「まぁ、当然だ。うちは客人も多いからな……」 * * * 「坊ちゃま、上手くいきましたね」 美奈子を車で自宅に送った後、運転手も勤めた執事が口を開いた。 「あぁ、あいつが鈍くて助かった」 「しかし、それですと…些か鈍い美奈子様には、なかなか坊ちゃまの想いは伝わりませんね」 「……うるさい」 END 〜あとがき〜 シタラーズの皆さま…すみませんでした。 キャラ崩壊甚だしい、どうしようもない話がうちのサイトの設楽ソロデビューとなりました!! 設楽先輩をわかってるようでわからない(苦笑) よく、わからないからジィらしき人も運転手も“執事”で一括。同一人物です。 ツンツンしてる割に顔に表情が出まくる設楽先輩が可愛いです。 でも、私の手に掛かれば…ただの頭の弱い子…。 里夏
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