「もしもし」

「あ、ハヤト?今から外出れる?」

「どうしたの?」

「初詣で行こう」

「夜だよ?」

「ほら、新年と同時にってやつ!」

「外雪降ってるよ?」

「知ってるよ」

「あぁもう、分かったよ」

「やった、じゃあ待ってるね」

「待ってるってどこで」

プツ…


「……はぁ」


切れた。

いっつもメルって慌てん坊だから。

メルを家までお迎えかな。


「どうしたのー?メルちゃん?」

「…うん、今から初詣で行こうって」

「そっか、行ってらっしゃい。あたしも明日マコトと行ってくるから、朝ご飯は自分で作るか兄さん以外の人にやってもらってね」

「はーい」

「明日ミサ姉いないの?」

「初詣で、いいでしょー。リュータ羨まし?」

「うっせーな」

「あ、俺も今から出かけてくる」

「ハヤトもかよ」

「メルちゃんと初詣デートだって」

「補導されっぞ」

「「やぁ、独り身」」

「ハヤトもミサキも厭味か!」

「ああ修兄抑えてえ!」

「やめろタロー!ここで殺んなきゃいつやるんだ!」

「修兄大人気ない」

「カジカもやられたいか?」

「やだ」


いつものパターンに呆れつつコートとマフラーで寒さ対策。

寒いだろうな。


「やーね嫉妬って」

「「ほーんと」」

「カジタロお!纏めて成敗してやらぁああ!」


玄関にまでひびく声。

ああもう煩い。

でもこんな感じだったら六兄とD兄が止めてくれるだろう。

修兄ももっと大人になればいいのに。


「じゃあ行ってきます」


俺は寒さの待つ外へ、わがままさんをお迎えに出るはずだったのに。

ガチャ

ゴンッ

「っ!、いった…」

「え?」


ドアを開けたらいるってどういうこと?


「メル…?」

「痛た…、え、えへ、来ちゃった」

「何やってんの風邪ひくって!」

「いっつもお迎えに来てもらってるし、さ」

「そういう問題じゃない」

「そう?」


「で、いつからいたの?」

「え?」

「鼻赤いし」

「え!?」


パッと鼻を隠すメル。

ああ長時間いたんだな。


「そそそそんなことないよ」

「どもりすぎ」


「ハヤトー、いつまで玄関開けてんだ」


ふと混ざる他者の声。


「メルが玄関前でずっと待ってた」

「ちょっと、それほんと!?」


パタパタとミサキ姉が玄関までやってきた。

玄関のメルを見て目を丸くしたのは言うまでもない。


「ずっと待ってたの?」

「そうみたい」

「そんなことないですよー」

「寒いからちょっとうちであったまっていきなさい」

「え、大丈夫です、ってあれ」

「ほら手も冷たいんだし寄ってって、初詣でその後でもいいでしょ」

「え、あ、えと…お邪魔します、ってハヤト手痛い!引っ張らないで」


初詣で


「来年は俺が迎えにいくから待ってなさい」

「えー」

「待ってなさい」