テイルズ | ナノ



依頼を達成した帰りに一輪の花を見つけた。

…あの人の机にでも飾ってみましょうか。

そう思ってその紫の花を摘み、花瓶に生けた。
ちなみにこの花、竜の胆を意味するらしいです。
貴方は少し顔を引き攣らせてましたね。

次は、雨降る時分に咲く青みかかった花。
今度はため息ですか。
結構貴方に合っている気がするのですが。
…冗談ですけど。

「最近どうかしましたか?」
「何がですか?ジェイドさん」
「花ですよ。飾ってるのはあなたでしょう」
「わかりましたか。綺麗でしょう?」
「花の選択はわざとですか?」
「さあ?何のことですか」

ああ、困ってる。
楽しいな。


次、紫から白く変化した花弁を持つ花。

貴方は少しだけ、戸惑ってましたね。
でも真実ですから。


次、鳥のような形の白い花。
…何か言いたそうですね。

「どうしましたか?ジェイドさん?」
「…本気ですか?」
「結構本気です」
「…そうですか」



さて、今日は何を飾りましょうか。
そうだそろそろ『  』でも飾ろうか。
そう思ってその花を買いに行ったその帰り。
見てしまった。

思わず身を隠した。
そこには楽しそうに笑う彼らがいた。
彼の笑みは私には決して向けられない笑顔。
俗にいう恋をしている笑顔だった。

…見なければ良かった。
知ってたのに。
貴方は彼の物で永久に私の物になりはしない。
彼らは私に気付く事無く通り過ぎた。

知らず知らずのうちに私は彼に捧げるはずだった鋭い棘のついた花と白い花の花束を握りしめ、地面に叩きつけていた。


「手どうかしたんですか?」
「はい?ああ、これですか?実験中に少し…」
「気をつけてくださいね」
「…ありがとうございます」


今日飾るのは川辺に咲く血の色を模した花。
彼岸の地にも咲くらしい。
いっそこの花、食べてしまいましょうか。
でも、そうしたら貴方は私をすぐに忘れてしまうでしょう。
それは嫌だ。
離れていかれるのはもっと嫌だ。

そのそばには小さな紫の花を添えましょう。

そしてもう一輪。
小さな小さな白い花。
貴方は気づくでしょうか。

これで花を飾るのは最後。
君にサヨナラ。

知らず知らずのうちに眼から涙が零れていた。



始めは竜の胆、リンドウ
『私は貴方の悲しむ顔が好きです』
次は雨の日に咲くアジサイ
『貴方は美しいが冷淡だ』
次ペンテステモン 
『貴方に見とれています』
次に鳥のような白い花サギソウ。
『夢でも貴方を想う』



送れなかったのは赤いバラ
『私は貴方を愛しています』
バラと一緒に束ねられていたナズナ 
『貴方に全てを捧げます』


最後に飾った血の色、ヒガンバナ
『想うは貴方一人』
そしてワスレナグサ
『私を忘れないで』
最後、小さな小さな白い花、ブライダルベール
『貴方の幸せを願います』


仕方ないから一歩引いてあげますよ。
けれどもしも、君があの人を泣かせるなら…
これ、喰わせます。
花の意味?…復讐ですよ。

「わかりましたか?   君?」


哀を私に




最後の最後はトリカブト。猛毒があるのです。
なんだが女々しくなってしまったorz
そしてほのかに漂うヤンデレ臭。