◎ アルズの場合
暖かい場所にいた。
誰かの声がした。
気がついたら、ゆっくりと落ちていくところだった。
――落ちていく。
―ここはどこだろう。
薄く目を開けると青い青い空が見えた。
僕は誰だろう?
落ちている。
下を向くように体制を変えると下には空とは違う蒼。
そして一隻の船。
……ちょっと待って、このまま落ちるのまずくない?
そう思ったのもつかの間、僕の体は船の甲板にたたき付けられていた。
ドガァッ!
衝撃で意識が飛びそう…
いや、飛ぶ。
せめて…もうちょっと穏やかな方法で…
「ひとが、人が空から降って来たーー!?」
僕を落とした誰かに対する恨み事、そして女性の声と共に僕は意識を手放した。
◇◇◇
「う〜ん…」
「あ、気がついた!」
目を開けると、そこにはピンク色の髪の女の子とエプロンをした…猫さん?がいた。
「大丈夫?」
「…君達は、誰」
「はじめまして。私はカノンノ」
カノンノ…笑顔がすごくかわいい…
「そう、なんだ」
「あら〜男前〜。これは港の女共が放っておきませんよ〜」
「ありがとう」
「もうパニール!あ、こっちはパニール、この船のお母さんみたいな存在なの!」
猫さんじゃなかった。
パニールさんか…優しいそうな人(?)だな。
「ねぇ、あなたの名前ははなんていうの?」
「名前…僕の…?」
カノンノに答ようとした…んだけど…
…何だっけ?
まずい、スッゴくまずい…
「どうしたの?」
「いや…ちょっと…」
…僕の名前、何だっけ?
「えっと…じゃあどこから来たの?よかったら送ってもらえるよ?」
「…ごめん。わからない」
名前はもうちょっとで思い出せそうなのに、どこから来たのか。それが思い出せない。
「え…?もしかして…記憶がないの?」
「…そう、みたい。名前はもうちょっとで思い出せそうなんだけど…」
「そうなんだ…。名前…」
カノンノは少しだけ悲しそうな顔をした。
でもすぐに顔を上げて、何かを思いついたように僕に聞いた。
「もしかすると何か名前に意味があるんじゃない?」
「意味?」
意味は…たしか…光とか…希望…っあ!
頭の中に一つの名前が浮かんだ。
これがきっと僕の名前だ!
「アルズ…そう!僕はアルズ!」
「アルズ…素敵な名前ね!」
カノンノは僕に手を差し出してぱあっと花が咲くように笑った。
「ありがとう」
その顔に釣られるように僕も笑ってその手を取った。
「ついてきて!まず船長を紹介するから」
「うん!」
この世界には楽しい事がたくさんある。
何となくそんな気がする。
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コミカライズではふわっと落ちてましたが、ゲームでは顔面からたたき付けられてたのを思い出しました。
記憶飛んだのもあのせいじゃないんですかね←
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