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シロガネ山に行こう。ふとそう思って思い立ったらすぐ行動の俺はジムリーダーの仕事を投げ出し、シロガネ山に向かった。あいつのとこに行くの、本当に久し振りだな。約一年くらいってとこか。あいつの事だからそんなに飯食ってねーんだろうな、と思って菓子パンやら何やらを買って鞄に詰め込む。…一歩間違ったら凍るかもしれないけど。マフラーを巻いて、コートも着る。これで防寒対策はちゃんとした、と思ったのが間違い。

「寒。寒すぎるだろ!」

あまりにも寒くてボールからウインディを出せば嬉しそうに鳴いて擦り寄ってくる。あー、暖かい。よしよし、と頭を撫でてやれば一吠えして俺が寒くならないように一生懸命擦り寄って来た。何こいつ可愛い。気付けば頂上で、予想通り吹雪いていた。あいつ、前見た時は半袖だったから…え、やばいんじゃないか半袖って。急いでレッドがいつもいた場所に行くと、寒さを感じないんだか何だか知らないが半袖で、石像のように動かなかった。凍ったってんじゃないだろうな!

「、おいレッド!」
「…グリーン。久し振り」
「おう。おまえさ、いい加減降りてこいよな」
「負けるまで、降りない」

相変わらず頑固だな、と言うと苦笑いしてグリーンには言われたくないよ、と言う。俺もつい笑ってしまうと隣にいたウインディが不思議そうに首を傾げて吠えた。

「あれ。ピカチュウはどこ行ったんだ?」
「……皆と遊びに行ってるよ」
「そっか。まあおまえも元気そうだし別にいいか。これ、差し入れ。食えよな」
「…ありがとう、グリーン」
「何だよおまえ気持ち悪いな。寒さでおかしくなったんじゃねーの?」

そう言いながら巻いていたマフラーをレッドの首に巻いてやると驚いた顔をして、また静かにありがとう、と呟いた。首元が寒い。それじゃあ俺帰るな。片手をあげて言うとレッドが寂しそうにまた来てね、と言った。やっぱり何かおかしい、気がする。動こうとしないウインディを呼ぶと、急いで俺の元に駆け寄って来た。また来ような。言うとまた不思議そうに首を傾げて小さく鳴いた。


「あら、グリーンおかえりなさい。どこ行ってたの?」
「姉ちゃんただいま。ん、レッドのとこ」
「…レッド君?何言ってるのよグリーン。レッド君はもう   じゃない」
「は?何言ってんだよ姉ちゃん。確かに俺はレッドと話して…」

言いかけて姉ちゃんを見ると悲しそうに目を伏せていた。…嘘、だろ?レッドがもうこの世にはいないって?だってさっき俺は、俺は、確かにレッドのところに行って話して、食べ物渡して、マフラーもあげて、あいつはいたはずなのに。出てくる、とだけ姉ちゃんに言い、姉ちゃんの制止の声も無視して走った。なあ嘘だよなレッド。おまえが死んだなんて嘘だよな!走って、走って、またシロガネ山の頂上に来た。そこにはさっき渡した菓子パンの袋と、俺が巻いてやったマフラーだけが、

(存在していたはずなのに)


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