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手を擦り合わせながら温めるために息を吐くとそれが白く見えて冬なんだな、と認識した。食材が入ったビニール独特の擦れ合う音が聞こえて慌てて持ち直す。重い。葱がはみ出てるとかそんなの気にしてられない。ぎちぎち、と軋むような嫌な音が聞こえて手に持っているそれを見るとこれでもか、と詰め込んだ食材の重さに何とか耐えている可哀想な袋が目に入った。これは、さっさと帰らないとやばそうだ。こんな道端で袋が破れてもらっても困る。寒い日なのに汗をかいてビニール袋を提げてる俺って一体何だ。ジムリーダーじゃなかったのか。ピジョットが恋しい。あいつと一緒だったらこんなに苦労しないで済んだろうに。

「…レッドのせいだ」

嫌味を込めて呟くと同時に、また袋が軋む音がする。ああもうやだ。重い袋を引き摺るようにして歩くと影がおちて結構な風が吹いた。最悪だ!

「……何が俺のせいだって?」
「…聞こえてたのかよ、この引き籠りな地獄耳野郎」

顔をあげれば見えるのはオレンジ色の巨体とそれに偉そうに立っている赤いやつ。内心助かったと思うのは内緒にしといた方がいい気がする。リザードン有り難う、と言って簡単飛び降りてに地に足をつけたレッドを見やると苦笑いして大変そうだね、と言った。

「誰のせいだ、誰の!」
「…遅いから心配した」
「え、あ、…悪い」

何で俺が謝ってんだとか思うけどレッド相手にするとそんな事は結構どうでも良くなったりする。するといきなりレッドが今にも破れそうな袋を俺から奪って重さなんか感じさせないくらい身軽にリザードンに飛び乗った。え、え?何お前腕の力どのくらいなわけ。

「袋は持っていってあげる。グリーンは、歩いて帰ってきて」
「はあ?俺も乗せろよ!」
「俺のせいだ、って言ったお返し。早くしないと皆で先に食べるから」

じゃ、と片手を挙げて帽子を深めにかぶりなおしリザードンによろしく、と呟く。急すぎて何が何だか分からない。あー、あいつはいつもあんな感じだっけか。自由だなあ、と苦笑いして悠長にもリザードンを見送る。さて、先に食われて全部無くなっちまう前に急いで帰りますか。何だかんだ言って鍋の準備をしてポケモン達と待っているであろうレッドを思うと自然と幸せを感じられた気がした。

(今、しあわせです)


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