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「……くるしい」
「知ってる。我慢しろよ」

うん、とレッドはか細い声で啼いた。10秒くらい経って、またレッドは苦しい、と言った。そろそろいいだろうか。

「今俺がやったみたいに首絞めれば殺せる」
「…うん」
「じゃあ、早速やってもらおうか」

レッドは起き上がって俺に跨った。さっき俺がこいつにやったように。どんな顔して絞めるのかなー、なんて思って顔に目をやれば帽子の鍔に隠れて見えなかった。何かレッドだけ俺の顔を見て殺して自分も死んでくって考えたらずるいような気がして、手を伸ばして帽子を取った。少し癖のある柔らかな黒髪が揺れると同時に、帽子が落ちた。あ、やっと見えた。やっぱり顔が見えねーとな。俺だって死ぬ時はこいつの顔見て死にたいさ。

「……こう?」
「…、ん。そんな感じ」

レッドの細くて白い指が首に食い込む。その手の冷たさに俺は少々驚いた。こいつの体内で血はちゃんと循環しているのか。ぼうっと考えていると視界が霞んできた。上手く酸素が取り込めない。息をすると乾いた気管の音が聞こえる。頬に生温かいものが落ちてきた、と認識するまで大体5秒くらい。そしてそれがレッドのものだと認識するまで8秒。視界がぼやけてるからしっかりと顔は見えないけど、レッドは泣いていた。最期にこいつの泣き顔拝めたという事実が恐怖を感じさせない。

「…グリー、ン」
「何、ないて…、だよ」

薄く笑った。言う事を聞かなくなってきた身体に鞭を打ち、雫を拭う。それでも止まる事なく溢れ続ける。最強のトレーナーが、だらしねーな。

「………すき」
「俺も」

見えたのは苦笑いを浮かべた顔と、とても綺麗な水。先にいって待っててやるよ。

(嗚、絶景)


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