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まだ死にたくない。今にも消えてしまいそうなレッドが目を閉じたまま呟いた。その言葉に俺は力を失くした手を握る事しか出来なくて、自分が無力に思える。幼馴染だ何だって言ったって俺はレッドに何もしてやる事が出来ないんだ。結局俺は何もできない普通の人間じゃないか。レッドの泣きそうな顔を見ると俺も泣きたくなった。

「何でグリーンが泣きそうなの」
「おまえだって」
「…俺ね、もう少しグリーンと一緒にいたかったな」

でもね、もう無理なんだよ。辛そうに笑ったレッドの声は震えている。最強のトレーナーが情けない。そう言うと人間だからね、と俺をあやすように言ってグリーンもそうだよ。だからそんなに思いつめないで。俺の手を握り返してレッドは言った。無茶言うなよ。今まで俺が何のためにおまえの傍にいたと思ってんだよ。おまえを守るためだって言ったじゃんか。俺は守りきれなかったんだ。あんなに守るって言ってたくせに守れなかったんだぞ。俺、最低じゃないか。

「ねえグリーン。ソラが見えるよ」
「……うん」
「グリーンには眩しくて見えないかな。凄く綺麗なんだ」
「ばーか。俺だって見える」
「そっか。俺、待ってるからね」

早くきて、なんて言わないけど待ってる間は少し寂しいかな。俺の頬に手を添えてレッドは苦笑いをしながら言った。綺麗な場所だからこそ、寂しい。綺麗なものだからこそ、亡くすのは惜しい。綺麗だからこそ、早く目にしたい。悪いな、レッド。おまえのとこに行くの、もう少し後になりそうだ。だけどいつかはおまえのとこに行くからな。いつもより白くなった頬に口付けをして風邪をひかないように、とレッドの肌に負けないくらいの白い布をかぶせた。

(空にてつ)


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