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「グリーン、泣かないで」

そ、と俺の頬に両手を添えてレッドは額にリップ音を立てて唇を落とした。泣いてなんかねーよ、そう言うと強がりだね、と苦笑してレッドは言った。こんなの涙じゃねー。勝手に出てくる水分だ。目を瞑って手の甲でそれを拭うとレッドは俺の手をとって指に口付ける。俺もそれには驚いて口を開けざるを得なかった。涙止まったね。クスクスと笑い声が聞こえて抱き締められている所為で密着してる身体を両手で押すと逆らうようにレッドはもっと強く俺を抱き締めた。ちょ、少し苦しいんだけど。

「ちゃんと戻ってくるよ」
「シロガネ山に行くとか馬鹿じゃねーの」
「…だから戻ってくるって」

ね?約束。背中を優しく叩かれてまるであやされてる気分になった。何か恥ずかしい。

「じゃあ、行ってくるね」

ふわり、とレッドは俺から離れて何かに穴があいた気がする。嗚呼、虚しい。何で置いてくんだよ。おまえいつもじゃん。おまえに追いつけたかと思えたらいつもおまえは俺の先を必ず歩いてるんだ。ずりーよ。置いてくなよ!無意識に伸ばした手がレッドの服の裾に引っ掛かった。レッドは振り向いて微笑しながら俺に言い放つ。

「何を勘違いしてるのか分からないけど、置いていってるのはグリーンだよ」
「……おまえの方だろ」
「ううん。違う。グリーンは違う俺を追いかけてる。本当の俺はいつもグリーンを追いかかけてるんだ」
「おまえは、おまえだろ」
「違うよ。本当の俺は弱い。バトルも、何もかも。だからせめて、違う俺を頂点にいさせて」

少しだけ、本当に少しだけ言っている意味が分かった気がした。レッドは辛い位置にいるんだ。

「今度帰って来た時には本当のおまえを愛してやるよ」
「うん、待ってて」

おまえが俺を追うと言うのなら、俺は本当のおまえに先を越されるのを待ってやる。

(立ちまって、振り返る)


▼一度は書いてみたかった赤緑…!これで良いのか悪いのか。


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