pkmn | ナノ

義兄弟設定。緑が弟。


はじめまして、これからよろしくな!って言いつつ笑いながら差し伸べられた手を幼かった俺は握る事も出来なかった。どうして笑っているの。俺たちは本当の兄弟じゃないんだよ。きっと心の中でそう思っていたから握手出来なかった。はじめまして、なんて言えなかった。
何も反応がない俺の顔をグリーンは少し不機嫌そうな顔で覗きこんだ。うん。その頃から優しいのは変わってない。覗きこまれた時丁度良く俺は泣いてたからグリーンは驚いてごめんな、って謝って自分も泣きだしそうな顔してたっけ。

おかあさんね、結婚することになったの。…そう聞かされたのは離婚して少し経った頃。多分グリーンもそのくらいに聞かされたんだとおもう。新しいおとうさんと合う日、俺は不安でたまらなかった。幼いながらも目の色が赤いのを気にしていたし、何よりまた殴ったりされるんじゃないかって思うと凄く怖かった。でも新しいおとうさんは凄く優しい人で、初めて合った時に頭を撫でてくれたのを覚えてる。レッドくん、宜しくねって。グリーンもすぐに俺のおかあさんに懐いた。そうやって新しいおとうさんと血の繋がってない弟と唯一の血縁者であるおかあさんとの暮らしが始まったわけで、一緒に暮らしていくうちにグリーンとの間にあったわだかまりも解消された。
そんな感じに平凡に暮らしてきたのにどうしてグリーンとこんな関係を持ってるんだろうって思うと間違ってしまった感が否めない。

「レッド君は何を考えてるのかなー」
「………べつに」
「せっかく今日は父さんも母さんもいないってのにさあ」

気だるそうに俺の肩に顎を乗せながらグリーンは言う。綺麗な茶髪が頬にあたって少々くすぐったい。なんて考えてると顔を強制的にグリーンの方に向けられ、ソフトキス。唇と唇が触れ合うだけの優しい接吻。それはとてもあまくてあまくて、まるでグリーンの唾液が蜂蜜であるかのように錯覚させる。

「明後日まで父さんも母さんも仕事で帰ってこないんだって」
「…知ってる」
「久し振りに夜、一緒に寝よーぜ」
「……うん」

嬉しそうに笑って俺の頭を大きな手で混ぜた。昔、初めて会った時におとうさんがしてくれたみたいに。やっぱりグリーンはおとうさん似だと思う。

「じゃあ、まずメシだメシ。インスタントでいいか?」
「…それしかないんだろ」
「まあ、これしかないな。…レッドお湯沸かして」
「………」
「面倒そうな顔すんな。お前も少しは手伝えよ」
「…インスタントなのに?」
「少しは黙れよお前」

もう一回ソフトキス。今度はグリーンの背中に手を回した。そうすればグリーンも俺の背中に手を回す。人生的な意味では間違ったかもしれないけど幸せだから問題ないだろう。正しくて不幸せよりよっぽどいい。
唇を離して、綺麗に笑うグリーンにつられて俺も笑った。間違った人生だけど幸せって事でご愛嬌。

(それをせと呼ぶ)


▼口には出さないけど心の中では色々思ってる赤さん。


- ナノ -