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凄く驚いた。何に、って聞かれたらそれはもう説明するのにかなりの時間がかかるであろう事実に驚いたわけだ。簡潔に言おう、俺のライバルであり幼馴染であるレッドがロケット団のボス、ええと名前は何ていったかな。そう、サカキ。そのサカキと付き合ってるって言うんだ。本気で驚いた。だってロケット団が解散したのはレッドが潰したからだぜ?そのボスと付き合ってるっていうんだ。しかも元悪人。な?信じられないだろ?あーあ。俺、レッドの事好きだったのになあ。昔から好きだったのに。あんなやつにとられたよ。素直になってればこんな事にならなかったのかなあ、なんて思うけどまあなっちまったもんは仕方ないってやつなんだろうな。諦めきれてない俺って本当、女々しいやつだと思うよ。

素直に言っちゃえば心配と嫉妬があった。何たって付き合ってるのは元悪人なわけなんだから、万が一の事があれば大変だ。もしそれでレッドが怪我したらあいつ、ただじゃおかねえ。そーんな事を思ってるやつに俺は嫉妬してる。何でおまえがレッドと付き合ってんだよって。普通に考えて昔からレッドの事を好きだった俺が付き合うのに相応しいと思わねえ?もー、俺やんなっちゃうぜ。今だってさ、ほら。そこでいちゃいちゃベタベタしてるだろ。べ、別にすすすストーカーなんてしてねーよ!ただなあ、俺はレッドが心配だからこうやって陰から見てるだけだ。何か文句あっか!そんなこんなでさ、レッドがサカキと一緒にいる時って結構幸せそうな顔してんのよこれが。そんな顔見ちゃうとさあ、こう、邪魔出来ないっていうかさ。上手く言えないんだけど、要するに俺はレッドが幸せだったらそれでいいのかもしれない。俺も幸せになりてーなあ。一言俺も何か呟いて立ち去ってやろうと思ったから小さく言葉を吐いた。

「好き。レッドが大好き、あいしてる。幸せになれよな!」

聞こえるはずはないんだけどレッドが俺の方をちら、と見た気がした。いやいやいや、ないってそんなの。でも確かに様子がおかしくて、サカキでさえも「どうかしたか」って聞いてる。そうするとレッドは首を横に振るだけで特に言葉は発しなかった。うーん、少しだけ残念。ていうか俺がここにいるって事、レッドとかサカキとかは知らないはずだしな。家に帰ろうと思って静かに歩きだすと微かにレッドとサカキの会話が聞こえた。

「サカキ。俺ね、緑が好きなんだ」
「ほう。わたしは赤が好きだな」
「…俺の名前と同じだからって言うんだろ」
「良く分かっているじゃないか」
「でもね、俺は昔から緑が好き。いつも優しかったから」
「……そうか」

ばっかやろー。俺は何だか無性に泣きたくなった。帰ったら姉ちゃんにポケモンの毛繕いしてもらおう。俺はボール磨きをして、それで…レッドが帰ってきたらおかえりって笑って言ってやる。早く帰ってこいよな。

(いちばんいのはだれ)


▼5000打企画5。リクエスト有り難うございました!わたしに榊赤←緑は無理でした。


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