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初代レッド→旅途中設定=一人称→僕。


シルフスコープを使って見えたのはカラカラのお母さんだった。要するにガラガラ。ロケット団から子供を連れて逃げる時に殺された可哀想なお母さん。だからこうやってずっと成仏出来ないでいるんだね。大丈夫。僕が全員ロケット団を倒すよ。そう言いながら手を伸ばしても攻撃されるばかりで僕は何もできなかった。このお母さんとはバトルをしたくない。絶対に。

「大丈夫。成仏して。何も怖がる事なんてないんだ」

精一杯、優しい声で。怖がらせないように。実をいうと僕も怖い。あのガラガラの攻撃を受けたら病院送りじゃ済まないような気がする。だけど、やるしかない。ガラガラは殺されたんだから。痛いって思うだけじゃなかったんだ。死は恐怖を意味する。ごめんね。僕たち人間の勝手な都合でこんな事をしてしまって。

「…ごめん、ね」

目が熱くなったと思ったら下にいたピカチュウが鳴いた。霞んでよく見えない。だけど心配そうな顔で僕を見ていることは分かった。僕、泣いてる…?嗚呼、情けない。こんな姿をグリーンに見られたら笑われるだけじゃないんだろうな。状況に合わない事を考えていると、ガラガラの声が聞こえた。見ればそれはまるで子供を安心させるかのような、とてもとても優しい顔。泣かないで、と言っているようなそんな顔。君は優しいんだね。

「……ガラガラ」

もう一度手を伸ばしてみた。今度は受け入れてくれる。その考えは間違いではなかった。僕の手が触れた瞬間にガラガラの身体が薄くなっていく。幽霊なはずなのにとても暖かい。成仏してくれるの?、聞くと頷いて僕の手に触れる。ぼろぼろ。僕の肩に飛び乗ったピカチュウからも涙が零れて服を濡らした。

「今までお疲れさま」

ガラガラの身体が見えなくなった。成仏、した。いつまでも泣いているのも格好悪い。未だに止まる事をしない涙を手で拭って立ちあがる。このままにしていては駄目だ。約束したんだ、ガラガラと。僕がロケット団を全員倒すって。歩き出した瞬間、泣いていたピカチュウも僕の真似をして涙を拭った。行こう、ピカチュウ。ずっとここにはいられないんだ。だから僕たちは僕たちの、出来る事をやろう。約束もちゃんと守るんだ。思う存分電撃を浴びせていいからね。呟くと当たり前だ、というようにピカチュウが鳴く。ガラガラの温もりを逃がさないよう手を握り締めて、僕たちは階段を上った。

(忘れない約束を)


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