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かぷり。そんな効果音が聞こえてきそうな程度に首をレッドに噛みつかれた。そんなに痛くはないけど全然痛くないわけでもない。おーい。俺は食いものじゃないぞー。そう言いながら未だに噛みついて離さないレッドの頭を撫でるとやっと噛みつくのをやめた。…と思ったのも少しの間だけで、今度は自分の噛みついた場所を舌を器用に使って舐めてくる。本当の事を言おう。くすぐったい。そんな気分になりそうなくらい何かえろい。もしかしたらこいつ、何か食いたいのかもしれない。

「何か食うか?」
「…いらない」

未だに舐め続けてるこいつの意図が分からなくて取り敢えず俺は舐める為に身体を密着させている事を良い事に、抱き締めてみた。ついでにレッドの頼り甲斐のなさそうな小さな背中をぽんぽん、と叩く。何か子供をあやしてるみてーだ。そうするとレッドも俺の肩に置いてある手を背中に回して抱きついてきた。首を舐める事をやめて肩に顔を埋める。レッドの柔らかい黒髪が素肌にあたって変な気持ちになりそうだ。いやらしい意味ではなくて。

「……グリーンはずっと俺の傍にいて」

小さく聞こえた言葉に俺は苦笑しながら当たり前だろ、と言ってまた背中を軽く叩いた。

「おまえの傍からいなくなる事なんてしねーよ」
「…………」
「あ、おまえ疑ってんだろー!嘘じゃねーって」
「…そう」
「うん」

一体何の会話をしているのか分からなくなってきそうだ。それを誤魔化すために控え気味に笑うと、レッドは何を考えたのか片手を俺の頬に添えて目を逸らせない程の綺麗な赤い目が俺を捉えた。こういう時って、あー。そうそう、キス、だ。緩やかにレッドは目を閉じて、当たり前のように俺も目を閉じて。レッドの真似をして頬に手を添えながらキスして口を離すとレッドも控え気味に笑った。珍しい。

「…もう一回噛んでも良い?」
「あ?別におまえが噛みたかったら何度でも」
「グリーンは俺のものなんだよ」

また噛みつきはじめたレッドをどうこうするでもなく、俺は何もしないでこれから先の事を考える事にした。そうやって想像してると何も言わない俺が気に食わないらしくて、レッドが強めに噛んで俺を現実に戻す。結構痛い。まあ、だけどそれもレッドのものだっていう印になるのならそれでいいかなあ、って思ってる自分がいる。後でレッドにも付けてやろう。さながらピカチュウのように擦り寄ってきて軽く噛むレッドに今日は甘えんぼだなー、なんて言ったら必ず不機嫌になるだろうからいつもは甘えない分甘えさせてやろうって決意した俺はやっぱりこいつには弱い。

情表現の自由)


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