pkmn | ナノ

幼少緑赤。


レッドがいなくなった。違う。いなくなったんじゃない、死んだんだ。もうあいつには二度と会えない。突然すぎたレッドの死は凄く簡単に俺の、あいつの日常を崩した。目では見えないけれどガタガタと崩れていくのを感じる。それらを俺は、たった一人でまた積み上げる事なんて出来ない。レッドは死んでいない。夢だ。なあ、どこにいるんだよ。いくら探しても見つかるのはあいつの無愛想な顔と微笑。現実にそれらはもうないと理解なんてしたくなかった。レッドの赤い帽子を俺はあいつのお母さんに今まで有り難う、って言われながら渡された。上手く受け取る事が出来なくて緩やかに落ちていく。それはまるでスローモーションのように。落ちたあいつの帽子、そしてあいつの物だけが綺麗な色を放っている。他は全てモノクロ。つまらない。何かに耐えきれなくていつもあいつと遊んでいた場所に俺は走った。そういえばシーソーでよく遊んだ記憶がある。一人では遊べない玩具の前に俺は佇んだ。

「…早くこいよ」

いつまでも待っているよ。だから早く来て。そう思いながら足を抱えて佇んでいる俺の頭の中をあいつの言葉だけが支配した。僕が死んでも、悲しまないで。ずっとグリーンの傍にいるよ。ちゃんと現実を受け止めてね。

「ばっかじゃねーの」

あいつが現実にいたという証が欲しいと思っていた。だって結局思い出だって幾らでも捏造する事が出来る。あいつに貸した本から指紋でも採取すれば俺は納得できるのだろうか、と考えた事もある。けれどあいつはちゃんと現実にいた。俺の頭の中を支配しているあいつの言葉は俺の捏造したものでも何でもない。ちゃんと、いた。情けない事に涙が出てくる。それ以上流さないために目を少しの間瞑って開けるといつも見ていた色付いた世界が目に入る。さよなら、レッド。俺には未来がある。おまえと違ってな。精一杯生きるよ。惨めに足掻いたって何したって、生きる。俺たちが今度会えるのは何十年後かだ。早死にはしない。始まりの町、俺はおまえの事を忘れてそこから始める事にするよ。振り向くと、いつも以上に俺が住んでいる始まりの町は白く思えた。とても眩しい。それで、いい。一から始まるのだから。俺さ、思うよ。おまえに会えてよかったって。ちゃんと言葉にしてやるから聞いてろよ。一回しか言わねえからな。

「きみにあえてよかった!」

かに君はいた)


▼ん?何かいつも以上に纏まりが無いぞ。


- ナノ -