pkmn | ナノ


変な気分になった。イーブイの首回りのファーに顔を埋めているグリーンと、少しだけ迷惑そうなイーブイを見ていると変な気分になった。変な、気分。色で例えると黒に近い灰色のもの。それがどろどろと渦を巻いている。俺の腕の中に大人しく収まっているピカチュウが不思議そうな顔で俺を見上げた。眉間に皺でも寄っていただろうか。

「あー、やっぱりふかふかは正義だよなあ」
「……迷惑そうな顔してる」
「うっせ!俺だってたまには癒されたいんだよ」

そう言って頬擦り。グリーンにとってファーは癒し、だそうだ。ましてやそれが女が好きそうな可愛いものとなれば尚更。顔のわりに意外と可愛い物が好きらしい。(ギャップがある、なんて思ってない。全然思ってない)気付けばピカチュウも俺の腕から抜け出してグリーンの元にいた。構って、というように服の裾を引っ張っているのを見ると俺のピカチュウは人と触れ合うのが好きなようだ。思えば旅をしていた時も撫でられるのを好んでいた気がする。

「おまえもたまにはピカチュウと触れ合ってやれよなー」
「…うん」

今まで撫でられっぱなしだったイーブイを解放して、俺のピカチュウをグリーンは抱いた。解放されたイーブイは疲れたように俺の傍に座る。お疲れ様、という意味を込めて撫でると嬉しそうに鳴いた。

「んー、何か違う気がするんだよなあ…」
「……ピカチュウにファーがついてないから」
「んなわけあるか。……レッド!」

いきなり叫びやがったグリーンの声に不覚にも俺は肩を揺らして驚いてしまった。同じくピカチュウとイーブイも耳を立てて驚いた表情をしている。

「そうだよ、やっぱりレッドだよな!」
「…意味、わからない」
「こっち来いよ」

人の話を聞く耳を持つ気がないらしいグリーンは手招きをする。仕方ないからグリーンの元に向かうといきなり抱きしめられた。慣れてる俺は大して驚きもしない。

「レッドが一番ふかふかだ」
「……ファーはついてない」
「ファーじゃなくてさ、おまえ自信が一番ふかふかなんだよ」

終いには頭まで撫でられた。…悪い気は、しない。嗚呼、俺、イーブイに妬いてたんじゃないか。構ってもらえてるイーブイに。俺、ばかだ。グリーンが一番好きなのは俺って分かってるはずなのに。何だかそう思うと腹が立ってきたからグリーンの腕の中で寝て起きた後、ピカチュウに十万ボルトを浴びせてもらおうと決心した。そして目を瞑る。子守唄はグリーンの小さな独り言と、イーブイとピカチュウの楽しそうな鳴き声。

(結局君もも依存している)


▼イーブイとピカチュウと緑赤のお話が見てみたい、とコメントを頂いたので。書いてる本人は楽しかったです…!


- ナノ -