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あまい、とレッドは顔を顰めながら言った。ああ、そういえばこいつは辛党だから甘いの苦手なんだっけ。そう思いつつ、レッドの口に運んだスプーンで食べかけのプリンを含んだ。うん、甘くてうまい。こんなに美味い物を嫌いだなんてこいつは相当損をしている。

「…唐辛子がほしい」
「知るか!おまえの家にあるだろ。今行って食ってこいよ」
「……じゃあ、いらない」

本当に面倒なやつだな、という意味を込めて軽く睨むと大して気にしてもいないような表情で溜息を吐いた。溜息を吐きたいのは俺だ馬鹿やろう。そういえば疲れた時に甘い物が欲しくなるらしい。きっと俺が甘い物を好きなのは毎日疲れているんだ。そう、半分以上…というか99%こいつのせいで。こいつが今俺の家にいるのだって何ヵ月前に何とか俺が説得してシロガネ山から連れて帰ってきたからだし、何日かしてまた戻ろうとするこいつを必死に止めたからだ。毎日引き止めるのも何だかプライドが傷ついたから夜頑張って(まあ所謂セックスってやつだ)腰を痛くして歩けなくした事もあったっけ。歩けるようになったら殴られたけど。ついでにピカチュウにボルテッカーされそうになった。まあ、とにかく今思えば俺、頑張ったよな。

「なあ、何でおまえさ、辛い物好きなんだよ」
「…すきだから」
「そんなの分かってる。俺が聞いてんのは理由だよ理由」
「……じゃあグリーンは俺を好きなのに理由はあるの」

つい固まってしまう。くそ、そうきたか。確かに理由はない。レッドだから好きなだけだ。多分こいつもそういう意味なんだろうな。

「…俺はグリーンだから好きなんだけど。唐辛子も」
「おまえさあ、唐辛子と俺って同じくらいなのかよ」

考え込むようにレッドは俯く。うわあ、何て言うのか唐辛子と同等は凄く嫌だ。答えが出たのか顔をあげたレッドの顔はやっぱり無表情。

「…グリーンの方が好き」

当たり前だ、と言いながらスプーンを置いて頭を撫でた。まあ実際のところ唐辛子の方が好きって言われんじゃねーかと思ってたなんて言えないな。俺も甘いものよりレッドの方が何倍も好きだけど。

(何ていったって君が番)


▼赤さんは緑より凄く男前だと思います。


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