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「……ポリゴンZ?」
グリーンに聞き返すと頷いた。このポケモン、見た事がない。グリーンに聞いたところ、どうやらポリゴン2の更なる進化系だそうだ。ポケモンなのに表情もなにもない。まあ、俺の知る限りポリゴンの頃からだけれど。
「どうだ?見た事ないだろ。俺も最近知ったばかりなんだよ」
そう言い、グリーンはそれの頭を撫でた。嬉しそうな仕草も何もない。感情を、持っていないのだろうか。…まさか、な。
「こいつ、性能の向上を目的としてパッチプログラムを当てられたらしいんだ」
「…パッチプログラム」
「そう。それが誰が作ったのか分からないパッチだったから本来の行動プログラムにバグを生じさせちゃったらしい」
「……だからこんなに不審な動きをしているのか?」
「不審っておまえ…まあ不審だけど。そう、そのパッチのせい」
かわいそうに。心から思った。これは生まれてきたものじゃない。人の手で、俺たち人間の勝手な都合で造られたもの。こいつだって造って欲しい、と思っていなかったはずだ。思うより前にこいつの意思なんてなかった、って言われれば何も言えないが。ポケモンは自然に生まれて自然に死んでく。それなのにこいつは自然に生まれなかった。造られた。死んで行く時もこいつは自然に死んでいけない。現にこいつは自然に進化は出来ないから。
「…かわいそうだな」
「おまえもやっぱ思うんだ?そっかー。まだ人間らしい感情はあったか。安心安心」
茶化すようにグリーンは言った。俺も感情くらいはある。ただ言葉に出すのが面倒なだけ。こいつはきっと、感情なんて無いに等しい。
「…ありがとう」
造られて、今生きていても何の意味もないと周りの人間から見られているのならそれはとても悲しい。だから言おう。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
感情のないこいつにも、それだけでもいいから伝わってくれれば俺はそれでいい。もう既にこいつはポケモンとして生きているのだから。精一杯の感謝を込めて。
「きっと、こいつも喜ぶと思うぜ」
そう言って俺の頭を撫でたグリーンの表情はとても優しかった。
(造られた君に感情を)
▼何を書きたかったんだっけ、わたし。