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緑赤20歳くらい設定。


目を疑った。何だ、この光景は。空になった数々のワイン瓶、奮発して買ったお高いチーズが包まれていたであろう白い包装紙、全てが無造作に捨てられている。俺の家ではない、と現実逃避をしたくなるのはこの家の主人が帰ってきたにも関わらず我がもの顔で未だにワインを瓶のまま飲んでるいつもは無口で無表情なこいつがいるからだと俺は思う。せめて飲むんだったらグラスとかコップに注いでの飲めよ。てかそれ俺が買ったワインにチーズだし。何勝手に食べてんだこいつはよお。

「おい、レッド!お前何勝手に人の家に上がり込んでやがる」

そう言って無口なあいつの元に近寄ると、飲みかけのワイン瓶を置いて俺を見た。心なしか顔が赤い。…酔ってるのか?眉を顰めてレッドを見れば、相変わらず無表情だ。頬が赤い以外いつもと同じ。しかし一つだけ違うところがある。いつもは固く閉ざされている口が少々半開きだ。そこから見える舌がなんつーか…凄く、エロい。

「…おかえり」
「あぁ、ただいま。…じゃねーよ!」
「うるさい」

とても不機嫌そうな雰囲気を放ちながら俺のネクタイを引っ張った。顔が近い顔が!こいつ酒に呑まれやすいタイプだな。なんて冷静に考えてると唇に何か当たった。レッドからの、キス。俺からは幾度となく仕掛けてるがレッドからは初めてだ。それのお陰でキスから解放された俺も口を開けてしまう。

「レッド、おまえ酔ってるだろ」
「…よってない」
「嘘吐け。あー、もう。今水持ってくるからそれ飲んだら寝ろ。泊まっていいから」
「……やだ。水いらない」
「いらないっておまえ…具合悪くなっても知らねーぞ」

聞いているのか聞いていないのか分からないがレッドはうん、と一言だけ発して猫のように擦り寄ってくる。ほら、やっぱり酔ってんじゃねーか。

「…グリーンはおれからはなれちゃだめ」

縋りつくような声で言うもんだから不覚にも心臓が跳ねた。何か、か、かわ、可愛いなって思ったりした。ちくしょう。分かっててやりやがってんだったら許さねえ。

「離れない、じゃなくて離れられないから安心しろ」
「……うん」

綺麗な微笑みを浮かべて俺の腕の中で眠る酔ったこいつを朝まで今の体制で見てると思うと、とてもじゃないが耐えきれる自信がない。あーあ。明日は大事な予定があるのに。それもまだ全部飲んでないワインもあるし。明日片付けよう。俺の何かが耐えきれなくてこいつを無理矢理組み敷いちゃう可能性もあるがそこには目を瞑る。今は幸せそうに眠ってるこいつにどうか楽しくて優しい夢を。

(優しいにおちますように)


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