pkmn | ナノ


一緒に、行こう。そう言ってグリーンは俺の手を掴んだ。グリーンの向かう先は僕の知っている、けれど話した事は一度もないお友達という名の他人の元。グリーン以外と喋る事が出来ない僕を気遣ってくれているという事は分かった。でもね、無理だよ。無理。他人が怖いんだ。僕を嫌っているって思うんだ。陰で何か言われてると思ってしまう。怖くて怖くて、グリーンしか信じられない。

「…グリーン、別にいいよ。僕が行ったって皆嫌がるだけだよ」
「なーに言ってんだよ。皆が嫌がるわけないだろ!」

話した事のないお友達との距離が狭まっていく。恐ろしい。近付くな近付かないでグリーンやめてお願いだから。誰か、助けて。得体のしれない何か、が体内を暴れまわる感じがして思わず目を瞑った。その瞬間、グリーンの足が止まる。いきなりだったから僕はグリーンの背中にぶつかってしまった。驚いて目を開ける。

「……グリーン?」
「気が変わった。やめた。レッドが俺以外のやつらと一緒にいるの、見たくない」

グリーンに気付いたお友達が向かってくる。僕はそれさえも恐ろしかった。繋いである手が震える。グリーンは僕の手を強く握ると、お友達とは反対の方向に走り出した。要するに、向かってきているお友達から逃げているようなかたち。走っている僕たちの後ろから何で逃げるんだよ、と怒ったような声が幾つか聞こえた。ねえ、グリーン。いいの?君のお友達だよ。きっと、嫌われちゃうよ。お友達が追いかけてこないのを確認して、走るのをやめた。

「…いいの?」
「別にあんなやつら、いいよ。俺さ、レッドだけの友達でいる事にしたから」
「僕、だけの?」
「そう。おまえだけの」

グリーンは笑って僕の手と、自分の手を重ね合わせた。同時に指も絡ませる。触れ合っている場所から伝わってくるグリーンの暖かさに安心出来た。

「だからおまえも俺以外の友達はつくるなよ!」
「……グリーン以外の友達をつくれないよ」

僕も笑った。頬が冷たかったり生温かったりするけど気にしない。何泣いてんだよ、と言われるまでは泣いてるなんて気付かなかった。グリーンのせいだよ。君がとても優しくて、嬉しい事ばかり言うから。

「おまえには、俺がいるからな」
「…グリーンには僕がいるからね」

絡めた指がずっと一緒だといっているようで嬉しかった。出来るなら、死ぬまで絡ませた指が解けませんように。僕からグリーンを奪わないで。グリーンの綺麗な緑色の目に僕が映っているのを見て、酷く優しい気持ちになる。グリーンは僕の額に口付けた。

だけの、)


- ナノ -