お散歩です |
安田くんがうちに住み始めてから早3日が過ぎた。 初めての休日なのでせっかくなのでお出かけすることになった。だって次のお休みを迎えてしまえば、あっという間に2週間が経つわけだし…何の思い出もなくお別れなんて寂しいじゃない? そう思って誘ってみれば二つ返事でOKを貰ったのでいそいそと服を着替える。リボン付きの白いブラウスにベージュのショーパン、上から紺色のカーディガンを羽織った。髪はサイドテールにしてシュシュをつける。よし、これでばっちり。 さて、何処行こうかな? 「んー絶好のお散歩日和だね!」 「え、デートじゃねーの?」 「お散歩でしょ?私たちの関係忘れちゃった?」 「覚えてるけどこれは立派なデートだろ!」 「えぇー?」 たわいのない話をしながら常伏の街をゆっくりと歩く。ふと目に入ったのは可愛い外装のペットショップ。 ……いや、首輪もリードも買わないけど。 「そういえば、安田くんの犬種って?」 「犬種!?名字は犬扱いを貫き通すつもりなの!?」 「ペットにしてって言ったのも、犬を選んだのも安田くんでしょ。このくらい付き合ってくださいな」 「……仕方あるまい。今履いてるショーパンで手を打とう」 「で、犬種は?」 「名字ってちょくちょくひでーよな…」 ぶつぶつ呟く安田くんを横目に様々な種類の犬を思い浮かべる。 ウェルシュコーギー…ゴールデンレトリバー…コリー…シーズー…ブルドッグ…うーん、どれもピンと来ないな。あと知ってるのは、マルチーズ…プードル…チワワ………だんだん遠ざかっていってる気がする! 考えるのを諦めて安田くんに視線を戻すと、なんとまあ変な顔をしていて「もしもし名字さん聞いてますぅ!?」と聞かれた。ごめん聞いてなかったよ。 「もう一回いい?」 「……仕方あるまい。今履いてるショーパンで手を打とう」 「履きたいなら早く言ってよ、貸したのに」 「ちげぇええそうじゃねぇえええ!名字の発想が恐ろしいぜ…!」 「だから名前だってば」 むう、と頬を膨らませば、安田くんはわざとらしく咳をした。 「AKYの新曲が買いてぇからCDショップに行く、オーケー?」 「名前です、オーケー?」 真似をして返せば、安田くんは目を丸くさせた。その顔を見て思わずにやりと笑うと、降参したと言わんばかりに両手を上げて、苦笑い。 「…名前ちゃん、オーケー」 |