狙ってません |
下校も安田くんと一緒。 同じ方向の友達がいなかったからいつも一人で帰ってたけど、今日からは安田くんと二人になる。なんだか嬉しくてにこにこ笑っていれば、安田くんは不思議そうにしていた。 「今日の名字、ずっとにこにこしてたなぁ」 「だって楽しかったもん」 「へー」 「安田くんといると楽しい」 「………」 隣を歩いていた足音が止まる。振り返ってみれば、安田くんは信じられないものを見たような顔をしていた。両腕で自分の体を守るように包んでいる姿は、少し気持ち悪い。 「どうしたの?」 「狙ってる…!?狙ってんの…!?」 「何を?」 「俺の心と体を!!」 「まさか!」 「でっすよねー!」 あはーははははーと変な笑い方をしながらふらふら歩きだした。 何言ってるんだろうこの子。 「もう私のでしょ?」 「へ?」 「ふふ、あんまり変なこと言ってると晩ご飯抜きだよ」 「えっ!?…っああ、ごめん。謝るから許して!あと今日の晩ご飯…何?」 「コロッケ。婆やの揚げたコロッケ美味しいの、楽しみにしてて!」 「……。おう!」 ちょっと挙動不審な気もするけど…安田くんだもんね!問題ない! 結論に至った私が家に着く頃にはコロッケのことで頭がいっぱいだった。 …食い意地張ってるわけじゃないからね? |