ペットができました

「名字!俺をペットにしてくださいっ!!」
「うおっ、いいよ!」


人生の転機は突然来るものらしい。










「安田くん、牛乳でよかった?」
「えっ何で牛乳!?」
「お茶もジュースもなくて。ごめんね」
「お、おう…」


二人で静かに牛乳を飲む。
安田くんと二人きりなんて初めてだけど私はこの沈黙はつらくなかった。

私は。


「あのよ、名字…」
「うん」
「その………っ」
「うん」
「……ご、ご趣味は?」


安田くん、お見合いじゃないんだよ。


「そんなに緊張しないで。罰ゲームか何かだったんでしょ?」
「っ!…わりぃ」
「ううん。安田くんさえよければの話なんだけどね、本当に住まない?」


カップをことん、と置いてからちらりと視線を向けると安田くんは目を丸くしていた。
いきなりこんな話されたらビックリするに決まってるよね。私もペットの話ビックリしたもん。


「…な、何で…!?」
「うちね、母親とお手伝いのお婆さんと住んでるんだけど、」
「お手伝いのお婆さんんん!?この家入ったときもビビったけど名字ってお嬢様だろ!?」
「違う違う!お母さんがよく働く人で…お手伝いの人はお母さんの知り合い!」


今にも立ちあがってしまいそうな安田くんの肩を抑えてなんとか落ちつかせる。ひかないでえええ距離おかないでえええ!ぜんっぜんお嬢様じゃないってば!


「…それでね、お母さんが明日から海外にお仕事なの。そしたら婆やと2人になるじゃない?」
「婆や!?」
「……お母さん心配らしくてね。ペットにしてくださいって言われたときはビックリしたけど、後々考えてみればちょうどいいかもしれない!ってことに気付いたの」
「…なるほど。確かにこんなでっけー家に婆さんと名字だけじゃ危ねーよな!」


ふーむ、と腕を組む安田くん。学校では確か…テロリスト?って呼ばれてるらしいけど全然そうには見えないし、真剣に考えてくれてるのがとても好ましい。良い人。


「無理にとは言わないよ!安田くんの都合もあるだろうし。それに私みたいな女の家なんて嫌だよね」
「いやいやいやいや!それはない!都合もない!」
「本当?母さんが帰ってくるのが2週間後なんだけど…」
「おう、じゃあ2週間な!」


よろしく!とニッと笑って片手を差し出されたのでそれを掴んだ。
なんか楽しみかも。

こうして安田くんとの生活が始まった。


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