慰めの竜巻

やっと、やっと、本が読める…!

いつもより早起きをして準備万端の状態で本に手を伸ばすと、お母さんにその手を掴まれてしまった。やっと月曜日が来たのに!土日の私が抜け殻のようだったのを知ってるのに!私の読書を邪魔するというのか!
眉を顰めればお母さんは私の手を放してこう言った。


「昼休みまでダメって言ってたわよ、担任の先生が」


さすが先生、抜かりないっす。








「名字生きてるかー」


2時間目と3時間目の間にある休み時間。机にべたりと項垂れている私を見て先生は(多分)ニヤニヤしている。顔を上げる気にもなれないので無視すると、こりゃダメだなぁと呟いて机の前にしゃがみこんで私の頭を撫でた。冷やかしなら即お帰りいただくんだけども、川嶋先生は少なからず私を気にいっているらしく何だかんだで可愛がってもらってるので多分心配されてるんだと思う。


「土日は何してたんだ?食って寝たのか?」


それでも心配6割冷やかし4割のギリギリだ。


「住山がそわそわしてて面白かったぞ。後で嫌み言ってやれ」
「何しに来たんですか」
「慰めに。後は褒めにきたのとついでに委員会の事知らせに」


普通逆だと思う。委員会の事は聞かないわけにはいけないので体を起こすと先生はニヤリと笑って私の腋の下を掴んでそのまま上へと抱き上げた。えっちょっ何してんのこの大人!?


「よーしえらいえらい!」


いやこれ高い高いですよね!
反動で倒れた椅子も気にせず、ついにはくるくると回り出した先生に私はされるがままだった。まるでメリーゴーランド。クラスメイトは唖然としていて、中にはピロリローンと写メを撮る子もいて、会いたくないはずの住山先生が凄く恋しくなった。住山先生ならこの状況でも助けてくれますよね…!


「先生ストップ!名前ちゃんのスカート危ない!」
「ん?」


突然聞こえてきた女の子の声に私はハッとしてスカートを押さえようとしたけど抱き上げられてるせいで手が届かない。必死の私は膝を折って踵で押さえることにした。これで自力で降りられなくなりました。


「先生」
「あぁ悪いな。子供がいたらこんな感じなんだなーって思うとつい」


肩をぺしぺし叩くと先生はやっと降ろしてくれた。ついじゃないです。そういう事は奥さんに言ってください。へろへろと力なく床に座り込んだ私に、先生はニヤリと笑った。サッと伸びてくる手に嫌な予感がしてすかさずその手を掴むと、より一層深く笑った先生のもう片方の手で髪をぐしゃぐしゃにされてしまった。あぁあああちくしょう!


「金曜日の当番は俺がやったから気にするな。それと図書だよりのアレは水曜日までで構わねーから絶対無理するなよ」


じゃあな、と去って行った先生はまるで竜巻のようでした。
この空気どうしてくれる!


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