漫画

月曜日、当番だった女の子が風邪でお休みしたらしいので私が代わりを立候補した。好きで図書室にいるし、役に立てるなら私の気分もいいし。先生はそう言うと思ったとニヤリと笑っていたけど、私の髪に伸ばした手は髪がぐしゃぐしゃになる前に阻止させていただいた。


「お前…名字だっけ、また当番?」


扉が開く音で顔を上げると何故か藤くんがいた。え、また追われてるの?首を傾げると藤くんは今日は違う追われてないと否定した。何も言ってないのにわかるなんて…先生が教えたことを覚えてたんだろうか。


「お休みなので代理です」
「ふーん」


本棚から1冊手にとってパラパラ読んで戻す、また違う本を手に取ってパラパラ読んで戻すを繰り返す藤くん。どうやら今日はただの読書らしい。
続きを読もうと本に視線を戻すと「なぁ」と声を掛けられる。

図書室にいるのは2人だけ。


「なんかオススメの本ない?」


なんかと言われても、うーん。藤くんの趣味がわからないんじゃ答えづらい質問だなぁと立ちあがって藤くんの近くの本棚に近づく。


「これとか、これが人気あります。漫画は読みますか?」
「漫画?あんの?」


こくん、と頷いてから漫画が置いてある本棚へ向かう。少ないけれど少しなら漫画はある。サ○エさんとか、ちび○る子ちゃんとか、藤くんには縁がないかもしれないけど。ここです、と指差せば藤くんはうわ本当だ、と少し驚いていてその姿がちょっと子供みたいでおかしかった。


「名字は漫画も読むのか?」
「こ○亀」
「ぶっ!なんでこ○亀?」
「長くて面白いですよ」


女性キャラクターが好きです、と言えば藤くんはまた噴き出した。私がこ○亀読むのがそんなにおかしいんだろうか…好みうんぬんは置いといて私はなんでも読むんだけどな。


「他は何読んだ?」
「ジャンプはいつも読みます」
「へー…普通女子って少女漫画だろ?」
「少女漫画も読みますが恋愛物が多いので戸惑います」
「苦手なのか?」
「いえ、初恋がまだなんです」
「は?」


え、その、何?ありえないとでも言いたそうな顔は!
確かに中2で初恋がまだなんて遅いって友達にも言われたけど…!私だってしたくなかったわけじゃないんです。ただ本読んでただけなんです。それだけなんです。
なんとなく目を合わせづらくてカウンターへ戻ると何故か藤くんまでついてきた。


「変ですか」
「は?」
「初恋」


じっと見上げると藤くんは目をぱちぱちした後、少し口角をあげた。


「お前らしいんじゃねー?」


王子は良い人だった。


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