素直なおおかみ |
「アッシターバくん!」 「うわあっ!?」 小さな背中にがばっと抱きつく。 ああ愛しい愛しいアシタバくん…!今日も名前はあなたでいっぱいです! 背中にすりすりと頬を寄せるとアシタバくんはもぞもぞ動いて私をはがそうとするので、より強く力を込めてギュッと抱きつくとアシタバくんは少し諦めた様子を見せた。この一連の流れは毎朝恒例で、最初はあたふたしていたアシタバくんも今では少し慣れたらしく抵抗することが減ったので私はとっても嬉しいのです。 「おはよう名字さん…なるべく挨拶は言葉でお願いします…」 「もう!名前って呼んで?」 「…離れてくれたら呼ぼうかなぁ…はは」 「はい!離れた!離れましたよ!」 それと同時に、私の扱いもうまくなったなぁと思います。 しかしそれは喜ばしいことなのです!アシタバくんに私のことを知ってもらえるなんて…!幸せすぎて爆発しそうです! 名残惜しいけれど名前を呼んでもらうため、バッと離れて2mほど距離をとった私にアシタバくんは苦笑いしていた。ああ写メ撮っちゃダメかなぁ?ダメかなぁ?その前に名前だ!名前を呼んでもらわないといけません! 「……名前ちゃん」 視線を横に逸らしたまま私の名前を呼ぶアシタバくん。頬っぺたがちょっと赤くてとってもキュートです…! けれどもうちょっと、ほんのもうちょっとだけわがまま言っていいかなぁ? 「目を見て呼んで?」 「っ…!……名前、ちゃん」 きゅぅうううんと高鳴る胸を抑える。今日も私の負けです…!こんな素敵な人を目の前にしてときめかない女の子はいないと思うのです。それなのに麓介の方がモテるというんだから世間の女の子は目が悪いと思います。オススメの眼科をお教えしま……ハッ、いけないいけない!ライバルを増やす真似などしては誰かにアシタバくんを奪われてしまいます! 無言で胸を抑える私に、優しい優しいアシタバくんは心配して自ら近づいてきてくれた。2mあった距離が1mに…! 「どうしたの…?」 チラッと見上げられては、私の中の狼さんも黙っていてはくれません。 可愛い可愛い、無防備なアシタバくんが悪いのです。 「アシタバくんに胸を奪われてしまいました」 責任、取ってくれますよね? 一歩踏み出して近くなった距離に戸惑うアシタバくんの頬をそっと撫でると、可愛い羊さんの頬は真っ赤に染まってしまいました。そして私の肩を押して抵抗するアシタバくんにクスッと笑って、その両手首を掴み息がかかるぐらいまで顔を近づけるとアシタバくんの目は困惑に潤む。 なんて愛らしいんでしょう。 「ストップ。アシタバに近づくなって言っただろ」 「ふ、藤くん…!」 いいところでぐいっと後ろに引っ張られた。麓介め、いつも私の邪魔ばかり…! 「仕方ないでしょ、こんなに可愛い反応をされたんだもの。私だってムラムラします」 「アシタバもコイツに近づきすぎるとこうなるって言っただろ」 「ごめん…どこでスイッチ入ったのかわからなくて…」 「アシタバくんのすべてでスイッチオンですっ」 麓介の手を振り払ってアシタバくんに抱きつく。 ああいい匂い…やっぱりアシタバくんのすべてが起爆剤のようです…! 「ちょっ、服の中に手入れないで名字さん…!!」 「名前って呼んで?」 「名前ちゃんやめて!!」 「……嫌がるアシタバくんを襲うのもいいですねえ」 「!!」 |