ガールズブルー

痛い。やばい。痛い。
私を女に産んだお母さんを恨むぞ、なんて思いながらお腹を抑えた。

激痛が私を襲ったのは突然のことだった。いつもは生理痛なんて全くと言っていいほどないのに今日は何故かお腹がずきずきする。そう気付いたのは学校に着いてからのことだったので、痛み止めは当然飲んでいなかった。
思わず「ぐっ…!」と唸ったせいで最悪な事にクラス中の視線を独り占めしてしまった。わあ消え去りたい。驚いていた先生に大丈夫です、と下げていた顔を上げると保健室で休むように言われてしまった。そんなに青い顔をしていたんだろうか…。授業中に抜け出すのが嫌だったから我慢してたのに、な。

今さらどうこう考えてもしょうがない。いつもより重い体を壁で支えながら歩いていると頭がぐらぐら揺れだして、たまらなくなってその場にしゃがみ込んだ。

つらい。
目の前が霞んでくる。
女の子なんてもうやだ。

『助けて』と心の中で呟いた。





「っ…名前!」


ばたばたと走る足音と、名前を呼ぶ声に、涙も拭かず振り返った。


「安、田…」
「名前!大丈夫か!?って全然大丈夫じゃねーよな!!」
「なんでここに…」
「はぁ?心配だから追っかけてきたに決まってんだろ!いつも名前はしんどくても一人でどうにかしようとするから、廊下で泣いてんじゃねーかって…」


ぼーっとする頭で、安田を見上げているとヤツは「おい聞いてんのか?」と何故か怒っていた。
聞いてるよ。ちゃんと聞いてるのに、なんで、なんで怒るの…?

なんで…っ


「やだよ…怒らないでよ…っ」
「…名前?」
「や、だ!嫌いにならないでっ、ミツくん…!ふっ…うわぁああん!!」


よくわかんないけど安田怒ってるし。私が避けまくってたのに追いかけてきてるし。
お腹も頭も痛くて、何も考えたくないし。何もかも嫌で。安田に嫌われるのが1番嫌で。

オーバーヒートして涙が溢れて止まんなくて。子供みたいに泣いちゃって。

そんな私を何も言わずに安田が抱きしめるもんだから、余計に涙が止まらなくなって。
廊下に泣き声が響いてるとか、もうどうでもよくなった。


「おっおなかいたいよぉ…ううっ…!」
「うん」
「もっ…もう、女の子やだぁ…!」
「そんなこと言うなって」
「なんでよ…っ!」


この痛みなんてわからない、ただのエロリストのくせに…!
溢れる涙も気にせずキッと睨んで頬をつねってやった。イタッ、とかそんなもんじゃないんだよこの痛みは!
…もう怒ってるのか泣いてるのかわかんなくなってきた。

袖で涙を拭っていると安田は私の前に座り込んで、少し照れくさそうな表情で「あのさ、」と話し出した。


「女の子じゃねーと俺の嫁になれねーけど、いいの?」
「…え?」
「今から先着1名様に安田くんプレゼント」
「な、なんで…」
「早く応募しねーと間に合わねーぞ」
「モテないくせに」
「う、うるせー!そっちこそ俺のこと好きなくせに!」
「……うん」
「………」
「………」
「………」
「……応募します」
「……おう」


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