迷路へ逃げる |
好きだと伝えておけばよかった。 誰かより先に告白しておけばよかった。 頭に浮かぶのは私が傷つかない手段。 目に浮かぶのは安田が女の子と歩く姿。 「名前、お前顔色悪いぜ」 「大丈夫。ごめんね美っちゃん」 「大丈夫じゃない奴ほど大丈夫って言うんだ」 ぐるぐる巡る、安田の顔。 安田が告白されない可能性なんてなかったのに。 自分が一番安田に近いと思ってたのに。 取られてしまう。 なんて、 私は彼女でもないのに。 ただの幼なじみなのに。 「しっかりしろ。安田がOKするとは限らねーだろ?」 「…相手があの桃原さんなんでしょ?私に勝ち目ないよ…!」 桃原さんはすごく可愛くて性格もよくて人気があって。 私と正反対の人。 勝てるはず、ないじゃん。 ごめんね美っちゃん。 こんなの美っちゃんへの八つ当たりだ。 私ってこんなにネガティブだったっけ。 安田がいたから明るく過ごせたのかなぁ。 小さい頃からずっと一緒で、一番の存在で。 安田にとって私は何番目だったかなぁ。 もしもわがまま言っていいなら、 神様が少しでも希望をくれるなら、 お願い私から一番を取らないで。 |