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大学の最寄駅にあるこじんまりとした雰囲気のレストラン。
レストランといっても、形式ばったところではなく気軽に立ち寄れるカフェのようなお店で、私の最近のお気に入りとなっていた。

今日も今日とてレポートのためにノートパソコンを持ち込んで、料理はオムライスを、ドリンクにジンジャーエールを注文した。
従業員は若い女の子とダンディなマスターの二人だというのに、この店の品数はとんでもない量だと思う。インド料理やタイ料理など幅広いメニューを取り揃えており、私はこれらのメニューをすべて攻略しようとひそかに企んでいた。
きっと攻略が終わる頃には体重がいくらか増えているんだろう……でも美味しいからいいの!


「お待たせいたしました、ジンジャーエールです」
「あ、マスターありがとうございます」
「いえ。それに、私はもうマスターではございません。中にいる彼女が跡を継いでますゆえ」


ちらっとキッチンに目を向けるマスター…じゃなくて、元マスター。
見るからに厳しそうなおじさまだけど、あの子に向ける目はやさしいものだった。

それではごゆっくりどうぞ、元マスターは下がっていったので、私は目の前の課題に集中した。料理が来るまでもうひと頑張り!





**********





ほかほかと湯気が沸き立つと同時に流れ込むデミグラスソースの香り。

ノートパソコンを一旦閉じて、今度は届いたばかりの美味しそうなオムライスに集中した。
んーっ、ほんとに美味しい!
熱くて口の中をやけどしそうになりながらパクパクと食べ進めていたが、何やら他の客が騒がしいような……?
口の中をもぐもぐと咀嚼しながら、店内を見渡してみたらそれはすぐに見つかった。


「えっ、オムライスねーの!?」
「ごめんなさい透さん……卵が売りきれちゃって、今すぐには出せないの」
「えーーーー!!なんだよそれ…アリエナイ」


若い女の子…新しいマスターが、可愛い顔したお客さんと揉めているようだった。とはいえ、砕けた口調で話しているので知り合いっぽい…?

もしかして私のオムライスが最後だったのかな。やった、今日はツイてた!

残りのオムライスも食べようとスプーンを動かした。一口大に掬ってぱくり、口の中に放り込んだとき例のお客さんとバチッと目が合った。


「…………」
「…………」


逸らすタイミングを失ってしばし見つめ合ってしまう。


「…………」
「……ふぅーん?」


唇を尖らせて拗ねたような表情で見られ、……いや、睨まれた気がする。
ただし可愛い子が拗ねても可愛いだけなので、私からすれば好きなものを盗られた子供のようだ。いいな、その可愛さ分けてくんないかな…彼氏欲しい。
代わりに食べかけのオムライスでいいなら分けてあげるから!なんて。

先に目を逸らしたのは可愛い子の方だった。


「……エビチリとコーラ」
「はい。かしこまりました、いつものお席でお待ちください」


はぁ、とわざとらしくため息をついて、しぶしぶとでも言いたそうに。
そんな彼に慣れているのか新マスターも普通に接していた。

すればまた、バチッと可愛い子と目が合う。
今度はふふん、と見下すように鼻で笑われてしまった。


――もしかしてオムライスのせいで反感を買った?


い…いやいやそんなまさか、いくら幼い顔をしていてもそんな子供っぽくないはず!
そうに違いないとジンジャーエールを喉に流し込んだ。次の言葉で噴き出しそうになるとは知らずに。


「エビチリ、俺特製ね」
「ふふっ、もちろんです!」



俺特製って、なんだよ……!?


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